LCC最後発のJAL、バンコク&ソウル便の皮算用 将来は北米、ヨーロッパ路線も視野に

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とはいえ、開業2路線には多くの競合が存在する。成田―バンコクはこれから航空需要がもっとも伸びるとされる東南アジア路線で、ジップエア開業時の就航地として、有力視されてきた路線。タイのタイ・エアアジアXやタイ・ライオン・エアといった海外LCCやフルキャリアが就航済みだ。

成田―ソウルも航空需要の大きさから、各社がひしめく。韓国のエアライン各社が高い価格競争力を誇り、国内勢はバニラが2015年に、JAL本体が2018年に撤退した激戦区中の激戦区だ。

こうした中、ジップエアはどのように差別化を図るのか。西田社長は「価格、サービス、機内コンテンツのどこかで振り切るのではなく、これらのバランスをとる」ことや、成田―ソウル路線では唯一の日系エアラインとなることを挙げたが、詳細な差別化戦略はまだ見えてこない。

ゆったりとした座席配置にニーズはあるか

西田社長が挙げた差別化ポイントの中で「ゆとりのある座席配置」は確かに異彩を放つかもしれない。LCCの定番機種はボーイング737型機やフランスのエアバス320型機といった小型機だ。一方、ジップエアが採用するボーイング787型機は中型機で、ゆったりとした座席配置が可能だ。だが、フライトが10時間を上回るような長距離路線であればまだしも、短・中距離路線に座席のゆとりを求めるニーズがどれだけあるかはわからない。

ジップエアは運航開始から2年後の黒字化という目標を掲げているが、「中・長距離LCCとしては非常に大きい挑戦」(西田社長)であることに間違いない。ジップエアは中・長距離LCCへ無事離陸することができるのだろうか。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケ、コンサル、エンタメ産業などを担当。過去の担当特集は「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」「激動の出版」「パチンコ下克上」など。

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