LCC最後発のJAL、バンコク&ソウル便の皮算用

将来は北米、ヨーロッパ路線も視野に

厳密な定義はないが、ジップエアは片道約7時間の成田―バンコク路線を中距離路線と位置づける。成田発着で片道10時間を上回る北米や欧州各都市への路線は、長距離路線と言えるだろう。

ただ、距離と運航時間が伸びるほど機材の回転効率が下がり、利益の確保は一段と難しくなる。中・長距離路線の先発組は苦戦を強いられ、撤退するケースも少なくない。日本発着では「インドネシア・エアアジアX」(インドネシア)の成田―バリ島線、「スクート」(シンガポール)の関空―ホノルル線といった中距離路線の運休が相次いで決まった。

日系大手では、ANA傘下のピーチ・アビエーションやJALが33.3%を出資するジェットスター・ジャパンが、現在も短距離路線を中心に運航している。しかし、両社とも機材回転率が下がりすぎない範囲で中距離路線へ参入することを表明。競争が激しい短距離路線に閉じこもったままでは、さらなる成長が難しいからだ。国際線LCCビジネスの主戦場は短距離から短・中距離へ移りつつある。

海外LCCは中・長距離路線で苦戦中

それゆえに、日本の競合他社と一線を画し、日系LCC初の中・長距離ブランドを標榜するジップエアの方針に大きな注目が集まっている。海外LCCは中・長距離路線で苦戦しており、「JALはジェットスター・ジャパンに出資しているが、その経営は合弁相手の豪・カンタス航空に任せてきた。(あくまで多頻度運航が原則である)LCCの知識が蓄積されていないのでは」(業界関係者)という声も少なくない。

だが、今回発表されたジップエアの就航路線は、中距離の成田―バンコク、短距離の成田―ソウルだった。つまり日系LCCの戦略と同じ「短・中距離ブランド」としてスタートを切るわけだ。西田社長は「LCC各社が最初に飛んだのは需要が太いところだった。そこから学んだ」と語る。背景には「言い方は悪いが、後出しじゃんけんをどう生かすか」(西田社長)という開き直った姿勢が見える。

ANA傘下のピーチは独立したブランド戦略を展開し、日系LCCの中で唯一海外勢とシェアで張り合う(撮影:尾形文繁)

日本発着の国際線LCC市場は、シェア上位を占める韓国系やANA子会社のピーチとバニラ・エアなど、すでに複数のLCCが割拠している。その意味でJALはLCC市場進出に出遅れた。だが、JALの赤坂祐二社長は以前、東洋経済のインタビューで「(LCC)参入の議論自体は、もう随分前からあった。決断を延ばしてきたわけではなく、LCCのいろんな可能性や収益性を最後まで見極めたかった」と語っていた。

将来的な中・長距離ブランド化を掲げつつ、競合の出方をうかがい短・中距離路線から開設する戦略は、短距離路線の重要性や中・長距離路線の厳しさを冷静に見つめてきたことの裏返しとも受け取れる。

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