フェイスブック、いきなり「方針転換」の危うさ ウィーチャット型「個人の対話重視」目指す
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは3月6日、サービスの軸足を情報共有や開かれた会話から、個人間の対話に移すと発表した。しかし、ソーシャルネットワーキングの未来として彼が示したビジョンは、すでに存在している。アメリカにはないだけだ。
それが現実になっているのは、メッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」を擁する中国だ。
小規模グループ間の対話に将来性
中国のIT大手、騰訊控股(テンセント)が2011年にサービスを開始したウィーチャットは、テキストや音声もしくはビデオ通話で1対1の対話をすることができる。ユーザーは最大500人とグループを作ることができ、話題のトピックについて意見を交わすことも可能だ。
フェイスブックのユーザーは、自分のニュースフィードに絶えず広告が流れるが、ウィーチャットのユーザーが「モーメンツ」で目にする広告は日に1つか2つだけだ。
その理由は、ウィーチャットが広告に収益を依存していないからだ。ウィーチャットのモバイル決済サービスは中国で広く普及しており、ユーザーはショッピングからゲーム、公共料金の支払い、フードデリバリーの注文まで、すべてアプリ内で実行できる。ウィーチャットはこうしたサービスの多くから手数料を得ている。
「ウィーチャットは、非公開の対話、とくに小規模なグループ間の対話に将来性があることを明確に証明している」と、北京大学教授で投資が専門のジェフリー・トウソンは指摘する。「ビジネスと暮らしにとてつもなく有用だ。将来の道筋を示している」。
中国で起きていることは、フェイスブックのビジネスシフトだけでなく、より広範なインターネット界の変化を占うヒントになる。シリコンバレーのIT大手の多くは今日、成長を維持し、新サービスを開発するための収入源としてオンライン広告に依存している。オンライン広告はインターネットの生命線という人もいる。
しかし、月間アクティブユーザー数が11億人に上るウィーチャットは、とくに決済とコマースに基づいた別の事業モデルが巨大なデジタルビジネスを支えることを実証している。このことはフェイスブックのみならず、グーグルやツイッターなど多くの企業に影響を与える。