「死にたい」とネットに書く人に伝えたいこと 匿名で相談を行うコミュニティでは防げない
大抵の場合、トップページには「集団自殺募集の禁止」や「宗教団体等の勧誘禁止」「個人情報の記載禁止」といった複数のルールがずらりと並べられており、その下に「入室」ボタンや掲示板のスレッド一覧などが置かれている。文字とスペースで画面を埋め尽くすこれらの断り書きは、これまでのバッシングやトラブルへのせめてもの対策であり、できる限り理論武装してどうにか場を守りたいという意思の表れのように映る。
掲示板の内容は、「死にたい」という思いをただ吐露するものから、「悩みを聞かせてほしい」といったものまでさまざまだ。サイトによっては、禁止されているにもかかわらず「本気で死のうとしている人募集」といったものも普通にある。
管理人の目が厳しくなっており、明らかな勧誘や細かな住所や氏名を記載した集団自殺の募集などは滅多にないが、自身のメールアドレスやSNSアカウントにつながる情報を載せるケースはたまに見かける。
とはいえ、それなりに自治が成り立っており、明らかなルール違反や荒らし行為は排斥される空気ができている。場をわきまえた悩みの吐露や自殺企図については緩やかに肯定される、それなりの不文律みたいなものも感じられる。ブログやSNSなどが広まったいまでも、自殺掲示板は廃れずに脈々と機能している感じだ。
Twitterやブログでときに自殺念慮を吐露し、自殺掲示板をのぞきに行くこともあるトミーさん(ハンドルネーム)はこう語る。
「(掲示板に)集まっている人の書き込みを見ていると、そういうことを考えているのは自分だけではないという慰めというか安心感のようなものを持ったりすることもあり、それで耐えられないようなつらい時間をやり過ごせる面もあるように思います」
Twitterやブログ、掲示板では役割が異なる
Twitterやブログは、誰かに伝えたいといったことは深く考えず、ただただ思いつくままに気持ちを書き出す場所。掲示板は他者がいることを前提にしてアクセスする場所。役割が異なる場として、どちらも大事にしているという。
「個人的につらいときは、もうダメだと思っていることを吐き出して一度倒れてしまったほうが、またやり直せる気がするので、そういった場所がまったくなくなると余計に息苦しくなるんじゃないかな、と思います」
末木さんもそうした効能はよく理解している。『インターネットは自殺を防げるか』でのインタビューでも当事者から肯定的なエピソードを複数聞いているし、その後に大手リサーチ会社と組んで行ったネットと自殺願望に関する大規模なスクリーニング調査では、ネットコミュニティーによるプラスの効能が数値化できるはずだと自信を持って臨んだ。
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