若い日本男子が化粧する「メイク男子現象」の謎 メイクは「自分をよく見せる」最高のツール?

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そして、彼らはみな、他人からメイクをしていると思われることに対し恐怖心を抱いていなかった。

メイク男子である彼らは皆口をそろえて、「他人からどう思われているかより自分がいいと思ったことをすることのほうが価値がある」「他人にとらわれる自分より自分らしさを大切にして思ったことを貫いている人のほうがかっこいい」と述べ、自分はこれでいいと思っているから他人の目は気にならないと語っていた。

SNSが普及し、いつでもどこでも人から見られるようになった今、他人の目を気にしする若者も増えているが、「メイク男子」にはそんなことなど到底どうでもいいらしい。自分らしさを貫く、そんな生き方を尊重する「メイク男子」は今の時代においてはレアケースなのだろうか。

原田の総評:韓流の影響はかなり大きい

大学生たちのレポートはいかがでしたでしょうか。

筆者は先日、青森県むつ市で男子高校生15名に対しヒアリング調査を行いましたが、そこでも「韓流トレンド」が浸透し始めていました。若年女性や東京など大都市部の若年男性のみならず、地方の若年男性の間にまで浸透していることには、大変驚きました。そして、「若年男性における韓流トレンドの浸透」が中心となって、メイク男子の増加が起こっていると感じました。

国同士では日韓関係のぎくしゃくが続いていますが、若年層の間では男女を問わず、音楽、ドラマ、化粧品、メイク法、チーズホットクといったトレンドの食べ物などさまざまなジャンルにおいて、確実に「韓流」は浸透しつつあります。

この5年ほど、日本のさまざまなジャンルの企業が高齢化する国内市場にとらわれ、若者層に向けたサービス開発はなかなか進まなかった、と筆者は感じています。一方の韓国は、もともと人口が少なく国内マーケットだけではビジネスが成り立ちにくいという事情があり、比較的若年層の人口が多い近隣の中国や東南アジアの市場を見てマーケティングをしてきました。その差が起点となって、日本国内で「メイク男子」が増加しているのです。

今、世界全体を見渡すと、若年人口が増える「若者の世紀」になっています。日本企業ももっと国外を見て、若年層に対するマーケティングを行い、その知見を国内の若年層マーケティングにも活かしていくべきではないでしょうか。

また、これまでのように欧米、とくにアメリカのトレンドを追うことにとどまらず、韓国のトレンドをきちんとリサーチすることで、国内の若年層マーケティングをしなくてはいけない時代になっていることを理解しておくことが重要になっています。

今後、「メイク男子の増加現象」に続き、韓流トレンドによって日本の若者の間でどんな変化が起こるのか、注目されます。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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