「あたしンち」の表紙を作った男の堅実な仕事観

見ただけで欲しくなる作品はこうして生まれる

作者さんにイメージがあっても、それが表紙としてはどうしてもうまくまとまらないこともあるんですね。そういう場合は相手の言いたいことを全部聞いたうえで、

『これだとうまくまとまらないので、こういうアイデアではどうですか?』

と代案を提案します」

作者のイメージを理解するには、広範囲の知識が必要だという。

「好きな映画や漫画、小説などの話を聞くと、参考になる場合が多いですよ。あの映画が好きなら、こんな風なデザインはどうですか?って提案したりします。漫画家さんのイメージを受け取るには、一つひとつの事柄にめちゃくちゃ詳しい必要はないですけど、広くたくさんのことを知っていたほうがいいですね。

打ち合わせのときは、相手の表情を見てしまいます。『OK』と言っていても納得してないんじゃないかな? とか。

これは、父親が怖い人だったのが原点かもしれません。『親の顔色をうかがう』クセがうっかり出てしまうのかも」

そうして作った関さんの表紙を見た人が、関さんに仕事を頼む。仕事が仕事を呼び込んでくる。

一度、仕事がなくてヤバいという時期を経験

関さんは『仕事をください』と出版社に営業をかけたことはほとんどない。

「いつか頼まれなくなる日がくるかもしれないです。そう思うとこわいですね。事実、ボラーレでも一度、仕事がなくてヤバイという時期を経験しています。そんなそぶりは見せなかったので、たぶん周りの人たちは気づかなかったんじゃないかな?

『ヒマなんで仕事ください』

って言う人に、仕事頼みたくないじゃないですか? みんな仕事頼むなら忙しい人に頼みたいですよね。

そのときは社長がなんとかして耐えてくれたんだと思います。僕はとにかく人に会うようにしました。同業者、漫画家、イラストレーター、編集者、などなど誰にでもです。いろんな人間関係を築くのも大事だと思います。そうしてジタバタしているうちに自然に仕事は増えていきました」

ボラーレは、実はコミック表紙専門のデザイン会社ではない。

写真集や小説のデザインもしている。かつてはマイケル・ジャクソンや野茂英雄の本をデザインしたこともあった。

「ただ、漫画以外の仕事はなぜか長続きしないんですよ。結局、頼まれるのは漫画のデザインなんです。今は自分から

『マンガデザイナーです』

って名乗るようにしてますね(笑)。漫画家さんも専門家に依頼するほうが安心できるでしょうしね」

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