「最初は小学館とか集英社とか、とにかく大手を受けていましたが、まぁ難しい。今思うと、そういう大手に受かった人たちって、『学生時代に同人誌を作りました』と、実際に面白いことをすでに発信していたんです。一方僕は、単純に世界を観光したことしか面接で話さない。旅行中の面白いエピソードをもっと語ればよかったのに、そこも要領が悪かったんでしょうね……」
大手が難しいとわかると、今度は小さな出版社や編集プロダクションを受け始めたが、それでも受からなかった。しかし、その最中に「ライター」という職業があることを知り、興味が湧いた。「あ、僕が発信したいことと一致する」と思った。それと同時期に既に活躍しているライターさんと知り合った。
しかし、親は恭平さんが就職をしない道を選ぶとは夢にも思っていない。
「まったく内定が出ない僕に、親は『大学を就職留年しなさい』と言ってきましたが、こっそり卒業しました。卒業後も夏までは就活を続けるけれども、それでも駄目だったらフリーターをしながらライター講座に通って、ライター関係の仕事に就こうと決めたんです。
卒業証書ももらった3月、親に卒業したことやフリーライターを目指すことを知らせると、『とにかく顔が見たいからすぐ帰ってこい』と実家に呼び出されました。怒られるというより、『フリーライターについてちょっとプレゼンしてみろ』という感じでした。
それで、『夏までは就活に専念してほしいから10万円援助する』と言われました。親戚にも周囲にもフリーライターなんていないですし、親としてもどう扱っていいかわからなかったようです。数年でライターとして芽が出なければとにかくどこでもいいから就職してくれと言われました」
ルームシェアするはずが42万円の借金を負うことに…
結局どこにも内定をもらえないまま、秋からライブハウスでバイトをしながらライター業の手伝いをすることに。フリーでのWeb記事の仕事が徐々に増えていき、1年後には月16万円ほど稼げるようになった。そんな矢先、中学の頃の同級生と再会した。
「めちゃくちゃ仲がよかったわけではないのですが、彼、ファッションモデルになっていて、『同じ夢を目指す者同士、ルームシェアしようぜ』という話になりました。ちょうど知人から都内に3Kで家賃13万6000円の部屋を紹介されたので、そこに2人で住むことにしました。1人当たりの家賃は6万8000円で、リフォームも自由。2年住めば家賃12万円に下げてくれるという、最高の条件でした」
しかし、引っ越しの10月1日を過ぎてもその友人がなかなか引っ越してこない。不安になって連絡すると「今、ちょうどコレクションシーズンで忙しい」と言われ、「でも、家賃だけは頼むぜ」と、最初の月だけは払ってもらった。でも、それから1カ月過ぎても引っ越してこない。「まだ来ないの?」「待ってて」の『引っ越すよ詐欺』は7カ月続き、彼は音信不通に。そのうち5カ月分の家賃は恭平さんが立て替え、このときばかりは親に「すまん、こういう状況で……」と説明し、42万円を借りた。
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