NGT、厚労省、日大にみる第三者委員会の不可解 不祥事になると必ず出てくる「伝家の宝刀」
不祥事の続く昨今、世はまさに「第三者委員会」ブームだ。厚生労働省の場合、統計不正問題で設けられた第三者委員会である特別監察委員会がその中立性を疑われ、再調査を経ても、組織的な隠蔽を認めなかった。厚労省は厳しい批判を浴び、第三者委員会の問題点も指摘されている。
厚労省だけではない。神戸製鋼のデータ改ざん問題、日本大学アメリカンフットボール部の危険タックル問題、東京医科大学医学部の入試不正問題と、世間を騒がせる不祥事では、必ずと言っていいほど第三者委員会が設置されてきた。民間企業のみならず、官公庁や大学・学校、スポーツ界まで、日本社会における組織の不祥事対応では、デファクト・スタンダードとして定着していると言っていいだろう。
この傾向は近頃、アイドル業界にまで及んできた。2018年12月、新潟を拠点に活動するアイドルグループ「NGT48」の山口真帆さん(23)が、男2人に自宅へ押しかけられ、暴行を受けた事件(男らは不起訴)。とりわけ、被害者の山口さん自身が騒動になったことを劇場の公演で謝罪するという、理解に苦しむ事態となり、海外ニュースが取り上げるほど注目された。
それも当初は運営側の適切な対処が進まなかったため、山口さんのSNSを通じた“告発”という形で、暴行事件が公になった経緯がある。その後、NGT48運営責任者の今村悦朗劇場支配人や、運営会社であるAKSの対応が問題視されたのだった。
第三者委員会の定義とはいったい何か
1月14日には、運営会社AKSがNGT48の公式サイトで、今村氏の異動(事実上の更迭)と新たな正副支配人の就任を発表。同時に「違法ではないものの、メンバーとして不適切な言動がなかったか、今回の件の真相究明のため、弁護士や有識者等の専門家による第三者委員会による調査を実施いたします」とし、第三者委員会の設置を宣言した。
ここで「第三者委員会」とは何かを確認しておこう。端的に言えば、企業や団体で不祥事が発覚した際に企業などから依頼され、徹底した調査をする外部調査チームのことである。通常は3人以上の弁護士や有識者で構成される。依頼企業に対して独立、中立かつ客観的な立場から、真相と原因の究明、再発防止策を提言し、その内容を報告書にまとめる。
そしてこれを公表することでステークホルダー(株主や消費者、従業員、取引先、債権者、地域住民等の直接的な利害関係者)や社会が納得し、当該企業は信頼を回復して存続の可能性が高まる、という寸法だ。
NGT48の暴行問題に関する第三者委員会は、さらに2週間以上経った2月1日、やっとNGT48の公式サイト上で、AKSの吉成夏子代表取締役、松村匠運営責任者兼取締役の両名によって、その陣容が発表された。委員長:岩崎晃弁護士(岩崎法律事務所)、委員:木内雅也弁護士(赤坂森の木綜合法律事務所)、委員:髙山梢弁護士(真和総合法律事務所)と3人で構成されている。参考情報として、各委員の法務略歴も付されていた。
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