NGT、厚労省、日大にみる第三者委員会の不可解

不祥事になると必ず出てくる「伝家の宝刀」

――しかし、第三者委員会に支払われる報酬とは、相当なものだと聞きましたが。

第三者委員会を組織すると、委員に支払う報酬は、だいたい2000万~3000万円くらいが相場。おそらく委員長が1000万円、もし残りの2人が若手の弁護士なら、それぞれ500万円くらいだろうと想像します。そこにさらに調査費用として、数百万円程度かかるかもしれない。

企業のM&A案件での仕事が減るなか、一部の弁護士にとって、第三者委員会の委員は稼げるビジネスなんですよね。だが、依頼企業の意に沿うような報告書を出していては、弁護士としての中立性を疑われてしまいます。

――高額ですね。仮にその金額をAKSからもらうとしたら、AKSにとって厳しい内容の調査結果は出しづらくなりそうです。“忖度”が働いて。

NGT48劇場は新潟市の「ラブラ2」の4階にある(筆者撮影)

すべてのステークホルダーの立場に立って、踏み込んでいき、不正をした会社の膿を出し切る姿勢が、第三者委員会の委員には必要なのです。委員会にとっては、ファンを含め、すべてのステークホルダーこそが真の依頼者なのです。これは、弁護士も経験を積んで慣れていないと、なかなか難しい。弁護士はいい意味で依頼者に寄り添い、その立場を代弁するのが仕事の基本。が、第三者委員会では、名目上の依頼者である企業に対して、厳しくしないといけない。普段と逆になるので、切り替えが必要なんです。

多額の報酬ですが、それは社長のポケットマネーから出ているわけではない。ステークホルダーたちから出ているお金です。この場合なら、NGT48のファンのみなさんがCDやグッズを買ってくれたお金、CMに起用してくれた企業が支払ったお金で、本来ならアイドルやスタッフたちの給料となるべきお金の一部を使って支払われている、と考えるべきなんです。委員会はファンのみなさんや被害者を含むアイドルたちが納得できる結果を出さないといけない。

“なんちゃって第三者委員会”が多すぎる

――依頼企業と委員会弁護士の距離が近いと思われてしまうのは大変問題ですね。この第三者委員会は自らステークホルダーへ報告せず、AKS取締役会に報告し、AKSが対外的な発表をするようですが。

第三者委員会とは名ばかりで、経営者の責任回避や隠蔽に利用される“なんちゃって第三者委員会”があまりにも多くなってきた。そこで私たちは「第三者委員会報告書格付け委員会」(委員長:久保利弁護士)を立ち上げました。ガイドライン作成に関わったメンバーを中心に、さらに研究者やジャーナリストの参加を得て、公共財としてのよりよい第三者委員会報告書を世の中に送り出そう、という試みです。

性能データ偽装をした、神戸製鋼が昨年3月に出した報告書についても、厳しい格付けを行いました。今回の第三者委員会も、神戸製鋼のケースと似たものになるかもしれない。委員会の報告を企業が都合よくつまみ食いして報告をする形です。独立性、中立性を備えた専門家による第三者委員会報告書とは、縁もゆかりもないものが出てくる可能性が高い。

――依頼企業からの独立性に疑念の余地が残る第三者委員会に、暴行被害者の山口真帆さんや他のメンバーが聴取を受けても、信頼して真実を話せるかどうか疑問に思えてきます。

今、批判を浴びている厚労省の第三者委員会は、聴取に幹部が同席していたことが問題、とされました。聴取に事務所側スタッフがいてはならないですよね。また、わかっている範囲の情報からすると、この委員会はAKSからの独立性の確保が甘いと思われても仕方ないので、メンバーは怖くて真実を語れないでしょう。独立性や中立性の点では、NGT48の件も、厚労省や神戸製鋼の件とつながるものを抱えていると言えます。

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