飲み屋で「愚痴る」のが必ずしも悪でない理由 問題発見能力を身につけることが重要だ

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1つ目に、問題というのは「あるべき姿と現状とのギャップ」ではあるものの、あるべき姿が実現不可能な場合は、その問いは適切な問いではありません。実現不可能なあるべき姿と現状とのギャップは解決不可能な問題を生むだけです。

2つ目に、「漠然とした問題意識」も適切な問題とは言えません。問題が抽象的だったり大きすぎたりする場合は、解決できるレベルまで分解する必要があります。問題の内容が曖昧だと、その解決策は的外れになります。

これらの条件を満たし、「解くに値する適切な問題」を設定する能力が、「問題発見能力」です。

「問題発見能力」が十分に育っていない

一般的に新入社員や若手社員にまず求められることは、目の前のミッションを遂行するための「問題解決能力」です。一方、キャリアを重ねていくと重要視されていくことが「問題発見能力」です。とくに、経営者やマネジャー層になると、多くの場合、問題解決はメンバーに任せられるようになるので、問題発見こそが腕の見せどころになります。

しかし、「緊急事態」のときには、一般のビジネスパーソンにも「問題発見能力」が求められる場合があります。例えば、会社の経営状況が悪化して、社内に経営再建のためのプロジェクトチームが立ち上がり、そのメンバーに選ばれるといった場合です。今の時代、どのような会社でも突然このような事態に陥る可能性は十分にあります。

しかし、突然「問題発見をしてください」と言われても、多くの場合は対応できるものではありません。平常時であれば、多くの会社組織において解決すべき問題を決めるのは、経営陣やマネジャー層であり、一般のビジネスパーソンが「問題発見能力」を鍛える機会は少ないのが現実です。

実際にわれわれは学生時代や新入社員のころから多くの課題を与えられ、「問題解決」をするトレーニングを繰り返してきました。しかし、「問題発見」のトレーニングはあまりしていないケースが大半です。

「問題発見」は抽象度が高く難しいものでもあります。実際、ビジネスの現場はよく本に書いてあるような「戦略→判断→実行→結果」のような一本線で描けるようなものではなく、もっと「ごちゃごちゃしたもの」です。いくつもの要因が複雑に絡まり合っていて、本質的な問題が特定できないことも珍しくありません。

事業再生のプロであり、元ミスミグループ代表取締役社長の三枝匡氏は、著書『ザ・会社改造―340人からグローバル1万人企業へ』の中で「経営者は『謎解き』が勝負」であると述べています。実際に経営者が直面するのは、パッと見では解決策が見出せない、複雑に要素が絡み合った混沌とした状況です。

このような混沌とした状況の中で適切な問題を発見できるか否かは「コンセプチュアル・スキル」の有無に大きくかかっています。

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