年収180万円が当たり前の未来に生き残る知恵 「自分の労働」以外で稼げる道を見いだせるか

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そこで目をつけるべきは、もう1つのお金を稼ぐ手段である金融資本です。これは「金に金を稼がせる」ということを意味します。リーマンショック後にアマゾンが労働者から搾取をしながら成長した際に、いちばん儲けたのはアマゾンに投資する資本家です。そして実は株式市場のおかげで少ない金融資本でもスマホを通じて投資に参加できる。これが現代社会の利点です。

読者の中で銀行預金に100万円を預けている人がいたとします。それはお金の働かせ方としては、言い方は悪いですがほとんど稼ぎを生み出していません。1年間で1000円しかお金を稼がないからです。

そうではなく国際資本家レベルの稼ぎをするアマゾン株に10年前にもし投資していたら?

その100万円は去年の段階で30倍の3000万円になっていた。金に金を稼がせるという考え方を知っていた日本人と、銀行預金しかお金の預け方を知らない日本人で、これだけの差がつくのです。

そしてこの計算からご理解いただけると思うのですが、人的資本が年収180万円。そしてこのケースでいう金融資本の稼ぎは年収300万円近く。2つの資本を同時に働かせれば年収180万円の時代でも中流階級の収入を得ることができるようになるわけです。

お金にも資本家として稼いでもらう

さて、ではアマゾン株を買えばいいのかというと、そうではないところが金融資本投資の難しいところです。詳しい人はすでにご存じだと思いますが、昨年、上場来高値をつけたアマゾン株はその後、やや値崩れを起こしてピークから2割ほど値下がりしています。株は上にも下にも大きく変動するリスクのある投資商品なので、割高なときに株を買ってしまうと大きな損をしてしまう。ではどうすればいいのでしょう。

実はマクロ経済の未来を考えると、とても簡単でわかりやすい正解があります。個別にアマゾンやグーグル、フェイスブックという企業がどうなるのかの予測は難しいのですが、世界全体のトレンドでいえば、アメリカのグローバル企業が世界の労働者から搾取をすることで、アメリカのグローバル企業は平均すれば大きく成長していく。これが2020年代に起きる未来だと考えるのです。

日本の株式市場には日経平均というインデックスがありますが、アメリカには優良企業500社を加重平均したS&P500という株式指標があります。そしてその指標に連動する投資信託がいちばん売れています。

『格差と階級の未来』(講談社+α新書)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

この投資信託に投資を続ければ、少なくともグローバル経済の中で儲かっている500社を平均させた利益を資本家として得ることができるでしょう。もちろん2010年代のアマゾン1点張り投資に比べれば儲けは小さいですが。そこまで儲けることはできなくても、グローバル経済が成長した分だけ、金融資本を増やすことができるのです。

2020年代には、価値が減少していく人的資本だけに頼るのでなく、こうやって金融資本に資本家としての搾取を担当させることが重要です。金に金を稼がせていくことが大切になるのです。繰り返しになりますが、仕事で稼いだうえで、お金も資本家としてお金を稼ぐ。

このようなダブルで資本を働かせることができるかできないかで、中流に留まるか、それとも新下流として暮らすかの差が生まれる。2020年代はそのような時代になるのです。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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