玲子さんは、異様に豪華な結婚式にこだわった。
「当たり前のように一流ホテルでの挙式が決まっていきました。引き出物からケーキに至るまで、湯水のようにお金をかけていましたね。すべてにオプションを付けて、これはヤバいと思ったんです。
それで、『さすがにお金をかけすぎじゃない? 今後の生活のこともあるし、少し節約したほうがいいんじゃない?』と、やんわり諭したんですが、『あんたは私のこと、何も考えてない!』とキレられました。向こうの親にも『今だけは、娘を思って許してやってくれ』と泣かれたので、それ以降は何も言えませんでした」
結局、その費用の大半は、独身時代の実さんの貯金が充てられたのだった。
家事分担をめぐって妻とバトル
玲子さんは、根っからの箱入り娘だった。
実家に里帰りするときは、両親が車で1時間ほどかけて、自宅マンションまで必ず送り迎えをしていた。娘は、甘やかして育てたと義理の両親も認めていた。同じ職場ということもあり、同僚から、玲子さんがわがままな性格だということは常日頃、聞かされていた。
「元妻は、お嬢様気質で親に甘やかされて育ったんです。とにかく自分のわがままを通そうとする。それで思い通りにならないと気が済まないらしくて、すぐに癇癪を起こすんです。だから、完全に100%自分の言いなりになる結婚相手が理想だったんだと思います。でも人と人が生活していたら、そんなことはありえないじゃないですか」
第一子出産後、玲子さんが育休に入ると、モラハラが激しくなった。きっかけは、家事分担をめぐるものが多かった。
「あなたは家事も育児もまったく何もしてくれないじゃない! 友達の旦那はもっとやってる。私にばかり負担させて!」
深夜によく突如として理不尽な言いがかりをつけられた。しかし、実さんは、仕事以外の時間でできる家事は、すべてこなしていた。
誰よりも朝早く起き、洗濯をして、まだ寝ている妻を起こさないように、1人で食パンを焼いて食べて、その足で仕事に向かった。そして毎日定時に帰宅すると、子どもを風呂に入れ、寝かしつけなどに追われた。
フルタイムワーカーとはいえど、その合間の時間は、慣れない育児に翻弄される妻を全力でサポートしていたつもりだった。
休日になると朝から、洗濯、トイレ掃除、風呂掃除、玄関掃除などの家事を毎週完璧にこなし、昼間は子どもを近所の公園に遊びに連れていった。
食事の支度だけは、食材の宅配サービスを取っていた玲子さんが担当したが、それ以外の家事を完璧にこなしているつもりだった。
「イクメンの定義って人によって違いますよね。それを逆手に取って、私が家事と育児をしてくれないという言いがかりをつけるんです。元妻も、自分の言い分に無理があるのはわかっていたと思います」
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