仮想通貨のバブル崩壊、ICOに「冬の時代」 投資家の阿鼻叫喚は「儲け話の失敗」なのか

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さらにこのメールが送信されて4日後、ビットプロパティーの代表取締役が交代した。フィリピン・セブ島に住居を置く外国人と思しき人物が新たに代表取締役に就任した。直前の代表取締役は、金儲けのノウハウを商品として販売する「情報商材屋」として知られる日本人が務めていた。デクシスチェーンプロジェクトも率いていたその人物に対し、昨年11月の説明会で責任を追及する声が投資家からあがったばかりだった。

BTPの投資家たちは返金の可能性に期待を寄せるが、交渉の窓口が海外に移っていくことに不安を募らせている。国内に残るのは2018年11月に説明会を開いた日本クリプトカレンシー協会の元メンバーくらいだ。だが、同メンバーが協会解散後に運営していたブロックチェーン関連企業は昨年末で閉鎖された。

2017年8月までビットプロパティー代表取締役を務め、事情にもっとも詳しいとみられる同協会の創設者に至っては、所在がわからない。昨年11月の説明会では「今は連絡がつかない状態にある」と説明された。

ビットプロパティー構想に実態はあったか

ビットプロパティー構想は、本当に実態のある事業だったのだろうか。日本クリプトカレンシー協会が推薦したICO案件には、形ばかりの上場後に上場廃止し、うやむやになったものはほかにもある。デクシスチェーンも本当に開発を進めているのか、疑わしい。

協会創設者の人脈をたどっていくと、「元金融機関ディーラー」を自称する人物とシンガポールに移住した出会い系サイト元運営者の2人に行き着く。

彼らと近しかった人物によると、出会い系サイト元運営者が日本で稼いでシンガポールに持ち出した資金の運用を元ディーラーに依頼。元ディーラーがスポンサーとなって仮想通貨やブロックチェーン関連のビジネスを日本で立ち上げた。それらのビジネスには正業もあったが、日本クリプトカレンシー協会のようなものもあった、ということのようだ。

ビットプロパティーの件は「投資家たちが仮想通貨バブルのさなかに、儲け話に目がくらんだだけ」なのか。そう一筋縄ではいかない点に、この問題の闇の深さが感じられる。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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