砂糖工場の“甘くない"コスト削減の現場 三井製糖が60億円投じたリニューアル効果とは?

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工場集約によって台数が倍増した包装工程

ここまでの製造工程は、コンピュータ制御による管理で24時間操業している。製品を業務用や家庭用の袋に詰めこむ包装工程は、従来は6台の設備で行っていた。

リニューアル後は岡山工場で使っていた設備を移設して計12台とした。工程も新たに効率的配置に組み替えたことにより、夜間操業が不要となった。

愚直に工場づくりを続ける

一連の工程では煮詰めたり、乾燥させたりするため、燃料代は精製糖工場にとって大きなコストになる。工場統合による固定費削減、稼働率向上や新包装工程による効率化で、三井製糖は当初、年間13億円の経費圧縮を見込んでいた。ところが、ここ1年で進んだ急激な円安によって燃料代が高騰し、7億~8億円へと圧縮額を下げざるをえなくなった。それでも「岡山との統合、神戸のリニューアルをやらなければ、その圧縮額もなかった。(再編の)効果は出ている」(三井製糖)という。

砂糖は、現在進められている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、日本がコメや麦などと並ぶ関税維持の「聖域」としている。だが、最後まで守りきれるのか、予断を許さない状況だ。もし関税自由化となり、たとえば安価な原糖が流入することになれば、沖縄や北海道のさとうきび、甜菜農家は壊滅的な打撃を受ける可能性がある。

では、完成品としての砂糖製品の場合はどうか。「今さら何をやってもムダ。どんなに工場を効率化したところで、TPPが成立して海外の安い砂糖が大量に入ってくれば、国内の製糖メーカーはひとたまりもないのではないか」と見る向きもある。

だが、その重量ゆえ、砂糖は輸送効率が悪い。日本まで運んで販売して利益が取れるほど安く作ることがTPP参加国の製糖メーカーに可能か、そもそも砂糖の国内消費量は減っているだけに海外勢が攻勢をかける価値のある市場と見るのか、疑問の余地も残る。それだけに「(神戸工場を先頭に)今後もコストダウンと高品質の工場づくりを続けていく」(三井製糖)ことが、今のところ国内製糖メーカーが取れる最善の方途なのかもしれない。

鶴見 昌憲 東洋経済 記者

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つるみ まさのり / Masanori Tsurumi

紙パルプ、印刷会社等を担当

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