トランプ大統領が2020年に向け打つ驚愕の一手 2月15日前後に戦略の一端が見える可能性も

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ここで、前回もふれた、昨今の大きな関心となっている「3つの潮流」について考察しよう。①米中の覇権争い②グローバリストと反グローバリストの対立③富の移転、である。①と②も、結局リーマンショック後のアメリカの対処のしかたに関係している。

リーマンショック後、アメリカの株式市場関係者は、こうなった以上「世界経済は中国の成長力によって支えられる」というプロパガンダを大々的に展開した。この時は僅か10年で中国がここまで脅威になるとは考えていなかった。

だがそこから10年。図に乗り過ぎた中国経済の金融レバレッジの総額は4500兆円とまで言われるようになった。これは現在のアメリカの金融機関の規模(バランスシート)が、最大手のJPモルガン社の275兆円を筆頭に、総額で約2000兆円であることと比べ、いかに異常なサイズかが分かる。では4500兆円のうち、どの程度不良債権化しているのか。

今のアメリカに「痛みを我慢する覚悟」はあるのか?

誰もが中国の実体経済のさらなる悪化を予想するなか、株価だけを考えれば、中国はアメリカよりも有利かもしれない。なぜなら、リーマンショックでバブルの張本人の金融が救済された理由が、システムの担い手として、彼らが「TOO BIG TO FAIL」になってしまっていたことによるからだ。今の中国の4500兆円の金融レバレッジは、世界経済にとって既に十分 TOO BIG TO FAIL の規模ではないのか。

一方で中国に覇権を渡すわけにはいかないアメリカは、中国に対してどこまで市場原理の原則を求めるのだろう。そのアメリカも、FEDは市場に流動性を無尽蔵に供給し(1STオーダー)、一般の市場参加者(2NDオーダー)を介し、何か不測の事態が起これば、今回のように、FEDが市場のサポート役(3RDオーダー)になることが当たり前に期待されている。元FRB理事のケビン・ウォルシュ氏が、QEに反対してFRBを去るときのコメントは「自由主義経済の中央銀行が、流動性供給の1STオーダーと、社会主義のような市場のサポート役の3RDオーダーを兼任するのは許されない」だった。

そのウォルシュ氏が昨年12月の利上げに反対するなど、今は真っ先に利上げ反対を唱える。アメリカもいよいよ日本化してきた。ならば、次の民主党政権ではUBIが始まり、QEではFEDはいよいよ株式を購入するかもしれない。だったら中国は有利だ。バブル崩壊のリスクを、もっと大きなバブルで覆ってしまうポンジースキームは、今のところ国家にだけに許されている。消費力が経済力なら、アメリカは中国に勝てない。

最後に、ジェローム・パウエル議長はFOMC後のスピーチで、声明文になかったことも捕捉した。FEDのバランスシートの大きさは、金融市場が必要としている流動性のサイズ。今のバランスシートはそれより大きいと言明したのだ。つまりバランスシートの縮小は今後も続けていくということだ。

繰り返すが、個人的には、アメリカが覇権を維持するには、中国との資本戦争で、いかに中国に厳粛な資本主義のルールを飲ませるかが鍵だと考える。そのためには、苦しくても、まず自分たちがリーマンショック後のオピオイド体質から脱し、ドルの基軸を守り、中国の4500兆円のバブルが崩壊しても、コラテラルのダメージを我慢する精神的強さが必要になる。だが国内政治では、もう直ぐそこにネオ・フランス革命の足音が迫っている。今のアメリカに痛みを我慢する覚悟があるかどうか。今年はそれを検証することになるだろう。

滝澤 伯文 CME・CBOTストラテジスト

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たきざわ おさふみ / Osahumi Takizawa

アメリカ・シカゴ在住。1988年日興證券入社後、1993年日興インターナショナルシカゴ、1997年日興インターナショナルNY本社勤務。その後、1999年米国CITIグループNY本社へ転籍。傘下のソロモンスミスバーニーシカゴに転勤。CBOTの会員に復帰。2002年CITI退社後、オコーナー社、FORTIS(現在のABNアムロ)、HFT最大手Knight証券を経て現在はWEDBUSH傘下で、米国の金融市場、ならびに米国の政治動向を日系大手金融機関と大手ヘッジファンドに提供。市場商品での専門は、米国債先物・オプション 米株先物 VIXなど、シカゴの先物市場商品全般。

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