トランプ大統領が2020年に向け打つ驚愕の一手 2月15日前後に戦略の一端が見える可能性も
もちろんAOCの登場だけでアメリカに「ネオ・フランス革命」が起こるとは言わない。ただ民主党から2020年の大統領選への立候補を正式に表明したカマラ・ハリス議員とコーリー・ブッカー議員は、既に選挙公約にUBI(ユニバーサルベーシックインカム)を入れている。さらに、もう一人の有力候補であり、リーマンショックでは、その救済策をハーバードの学者の立場で検証・総括したエリザベス・ウォーレン議員は、金持ちへの特別課税案を表明している。
彼女には「2008年に救済された金持ちには、国家に対して責任がある」という強い信念がある。そんななか、直接株式市場に影響を与えるかもしれないのが、バーニー・サンダース議員と民主党上院トップのチャック・シューマー議員が連名で出した法案だ。
NYタイムスに掲載された2人の広告によれば、両議員は、これまで中央銀行が供給したチープマネーで自社株買いをし、株主を喜ばすことで自らの高級を担保してきた大企業とその経営者に対し、今後は、従業員(労働者の賃上げ)や新しい分野への投資をしない場合、その会社の自社株買いには総量規制をかけるという法案を出した。この法案が実現すると、株式市場を支えてきたファイナンシャルエンジニアリングの一角が崩れる。
間もなく明らかになるトランプ大統領の方向性
トランプ氏が大統領である限り、そんな法案にはサインしないというのが大方の見方だ。だが個人的にトランプ氏は、再選のためにはどのようにでも変化するとみている。もしアメリカの過半数がネオ・フランス革命を支持するなら、潰すよりも先取りするのではないか。
筆者は、一般教書では、先にそれが確かめられたと考える。そしてその方向性を支えるのが、トランプが2020年も頼りにするはずのバノン氏の存在。彼は表向き反中ナショナリストだが本質はレーニストである。それは彼が2010 年にリーマンショック後のアメリカの惨状をみて創った映画「ジェネレーション・ゼロ」を観れば明らかだ。
そしてトランプ大統領がバノン氏の考えをどの程度組み込むかは、来る2月15日のメキシコとの国境の壁建設の期限が試金石になるだろう。元々、非常事態宣言で国境に軍隊を派遣、そのまま壁を作るという案は、南北戦争でのエイブラハム・リンカーンの手法を真似るべきだと主張したバノン氏の考えだ(国家が二分して法案が成立しなかったリンカーンは、大統領令で南北戦争を遂行した)。
トランプ氏が大統領就任当初、アンドリュー・ジャクソンの肖像を執務室に掲げたのもバノン氏の意見を取り入れたからだが、トランプ氏が自分にはない歴史の知識をバノン氏に期待しているのは明白であり、バノン氏は「リンカーンと同じ」という殺し文句にトランプ大統領が反応することを計算している。ただし、別のトランプ氏のブレーンは、国境の壁建設は、合衆国法典引用10号284で代用できるというアドバイスをしており、民主党が法的手段に出た場合を考慮すると、トランプ大統領がどちらを採用するかが注目される。
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