「統計偽装国家」日本が中国を全然笑えない現実 毎月勤労統計の不正が映す政府・官僚の腐敗

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ちなみに、国家公務員の平均報酬は、民間の大手企業と連動する形でこの20年間増え続けている。公務員の賃金を決めている人事院勧告制度は、大手企業の賃金上昇率を参考にして決めているため、どうしても高い報酬になる。実際に、人事院の国家公務員の給与水準は企業規模50人未満の事業所を比較に含めていない。

より実態に近いと言われている国税庁の「民間給与実態統計調査」と国家公務員の平均年収を比較すると、国家公務員の平均年収は民間よりも246万3000円(2017年度)も高くなっている。民間よりも、月額にして20万円も平均給与が高いのだ。省庁を挙げて政権に忖度するのも無理はないのかもしれない。公務員は、いまや立派な既得権益者なのだ。

経済統計の抜本的な改革はできるか

官僚などが統計の数字をいじることを「鉛筆をなめる」とよく言われるが、これは昔から行われていたことだ。こういう事態を未然に防ぐにはどうすればいいのか……。

冒頭でも指摘したが、日本は縦割り行政が根強く浸透しており、厚労省が作った統計は他の省庁ではほとんど使われない。経済産業省が作った統計や内閣府が作った統計も、それぞれが他の省庁で活用されることはほとんどない、と言われる。

日本が少子高齢化への対策が遅れたのも、人口推計を担当しているのが厚労省であったため、企業の成長を推進する経済産業省や農業の活性化を促進するはずの農林水産省の対応が大きく遅れたことが一因だ。

互いに干渉することなく、意識的にもひとごとといった政府全体の姿勢が、統計の不正調査やデータの偽装を日常化していると言っていいのかもしれない。厚労省が作ったデータを、財務省や文部科学省が積極的に使うシステムがあれば、そのまま鵜呑みにして信用してしまうことも防げるはずだ。

例えば、こうした各省庁の不正やミスがあった場合、すべての官僚の給料が数%カットされる、もしくは昇級がストップするといった連帯責任のルールをつくれば、各省庁の監視やチェックができるかもしれない。

国民に対して監視社会を作ってはいけないが、政府内にはきちんとした監視システムがあったほうが望ましいし、国民が監視できる仕組みを作っておく必要がある。監視制度が整備されていない発展途上国の統計は不正確極まりない状態になりやすい。

先進国といわれる日本でも同じことが起きている。少なくとも日本政府は「先進国の政府だ」と堂々と名乗れる状況にはない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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