ビジネスの場で注目、「デザイン思考」とは何か あらゆる場面の問題解決に役立つ思考法だ

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ペニントン:他にはエクスペリエンス・マップを制作したりします。ある商品を使った時の満足度を、何人もの人から聞き出し、それをデータに取って、マップ上に可視化していくのです。そうした作業で身につくのは、企業でも、ブランドでも、マーケティングでもなく、何より「人」が重要であるという認識です。そして、その過程で解決すべき問題を自ら見つけられるようになってもらいます。

古典的なデザイン・シンキングの学校では、課題を与え、それを解決するというステップを取ることが多いのですが、そうすると自ら問題を見つける力が養えない。本来、デザインというのは物事に足りないものに気づくこと。提示された問題を解決するのと、問題そのものを自ら見つけるのとでは、使う能力が異なるのです。

――斬新なアイディアを生み出すためのレクチャーもあるのでしょうか?

ペニントン:もちろん、発想力を鍛えるためのクリエーティブなエクササイズもします。例えばここに「ラモジャモ・カード」というアイテムがあります。片側にはイラストが描かれていて、ひっくり返すと、そのイラストから想起されるキーワードが羅列されている。このカードを無作為に引いて、90秒以内に、想起する言葉を次々と言っていきます。

発想力を鍛えるために「ラモジャモ・カード」というアイテムを使用(写真:HILLS LIFE DAILY)

これは、鍵のかかっている大人の想像力を解放するような作業。子供の遊びのように思うかもしれませんが、真剣なエクササイズです。大人が持つ膨大な知識に、想像する自由を与えてあげるのです。こうしたデザイン思考は、身につけばすぐにでも仕事に活かせるはずです。

――デザインアカデミーを都心に開講することにも意味があるのでしょうか?

ペニントン:私たちは大学ではない、社会人のための教育モデルを模索しています。目指しているのは、社会人や主婦など、あらゆる立場の人がアクセスできる、開かれた空間です。1日限りのワークショップに参加して、デザイン・シンキングの面白さに触れるのもいいですし、週に1度のカリキュラムを長期的に受講して、デザイン思考を徹底的に身につけるのもいいでしょう。

覚えておいてほしいのは、この教育システムがあらゆる問題の解決に有効であること。現状をよりポジティブな方向へと変えていく。デザイン・シンキングにはその力があるのです。

(photo by Nozomu Toyoshima、
edit & text by Yuka Uchida)

マイルス・ペニントン(Miles Pennington)/東京大学生産技術研究所教授。専門はデザイン先導イノベーション。デザインアカデミーの共同ディレクターとして、プロジェクトに携わる。前職は、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの、Innovation Design Engineering(IDE)およびGlobal Innovation Design(GID)の学部長。

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「HILLS LIFE DAILY」編集部

六本木ヒルズ開業の翌年に創刊された、都心エリアのためのライフスタイルメディア。都市生活者に向け新たな情報やトレンドを伝え、アイデアやビジョンを広く提案しつつ、東京という街のクリエイティブな可能性を高めてゆくことを目的としている。

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