洋画が休眠状態から復活してほしい
――近年、日本の映画業界は、邦高洋低という状態が続いているのですが、映画館で体感すべきこの映画が、洋画復権の足掛かりになるといいなと思うのですが。
僕がこの映画に対して誇りに思っていることが何かと言えば、それはやはりほかの映画とは違うということだ。もし日本において、洋画が休眠状態であるとしたら、この映画をきっかけにまた上がってくれることを祈っているよ。
ただし洋画にもすばらしい作品はたくさんあるが、中には、先ほど言ったような、心の部分から作られた映画ではなくて、儲かるからという産業的な理由だけで作られた作品があるのは事実だと思う。頭のほうばかりが先行して、情熱や心をないがしろにしているのは問題だ。日本の観客はとても洗練された人が多いので、そういった作品を見極める力が大きいのかもしれない。でも『ゼロ・グラビティ』は、この作品を愛した人が作った映画。情熱がある人が作った映画なんだ。プロデューサーは心と頭を結ぶ存在だと思う。最初は心から始めないといけないが、でもそれから頭の部分、つまり商業的な部分にも耳を傾けないといけない。いちばん理想的なのは、心と頭がうまく融合した作品だと思う。
――日本では3D離れも叫ばれています。この映画には、そんな人たちをも劇場に呼び戻すことができるようなポテンシャルがあると思います。
自分で言うのもなんだけど、『ゼロ・グラビティ』は今まであった3D作品の中でも最高の作品だと自負している。実は初めて脚本を読んだときは、「Gravity Space Adventure 3D」というタイトルだった。つまり、アルフォンソは最初からすべてを3Dで頭に描いていたということなんだ。
もちろん制作の段階でも、最初から3Dを想定して作られた。3Dスーパバイザ―が、いちばん最初からかかわっていたんだ。だから、もし3D効果として妥協しなければいけないという局面が直面したら、まずは3D効果を優先させて、撮影方法自体を変えたりしたこともあったからね。それからアルフォンソといえば長回しが有名で、本作でもオープニングは12分半という長回しのシークエンスとなっているが、その長回しもうまく3Dと融合していると思う。
それからもうひとつ3Dのよさといえば、宇宙がどこまでも続くということだ。永遠、無限のものを作り出すために3Dは必須だったというわけだ。近年のほとんどの3D映画は奥行きの効果を狙っているが、この映画では唯一、とある場面で、この3Dが前に飛び出す箇所がある。飛び出す画面というものをアルフォンソは意図的に演出しているんで、そこは見てもらいたいね。
(撮影:風間 仁一郎)
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