「AI=ロボット」と考える人の大いなる誤解 擬人化してしまうことの弊害はいったい何か

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しかし、AIとは機械学習をはじめとする「手法」や学問領域の総称でしかなく、姿形のないものだ。ロボット工学の領域もAIという広義の学問領域の傘下に入ることが多いが、いずれにしても、AI=ロボットではない。

つねにロボットや人間の顔といった擬人化クッションを経ないとAIについて議論できないようなら、いつまでたってもAIは「中身のわからないブラックボックス」的な存在になってしまう。

擬人化がビジネスの弊害に

AIビジネスを考えるうえでは、この擬人化が弊害になる。AI=ロボット(話しかけるインターフェースがあるもの)と思っている経営者は、まさか自分たちが最適価格予測アルゴリズムを導入しようとか、社員のスケジューリング最適化モデルを使おう、というアイデアが浮かばないのではないだろうか。私がAIを擬人化しないほうがいいと考えるのは、こういった機会損失を防ぎたいからである。

また、AIは、火や電気やインターネットと同様で、単なるツールでしかない。「AI“が”予測する」ではなく「AI“で”予測する」という言い方が正しい。これは「インターネット“が”メールを送る」と言わずに「インターネット“で”メールを送る」と言うのと同じことだ。

日本人が「AIが自分たちの仕事を奪う」と考えがちなのも、この擬人化の弊害の1つだと考えている。AIをロボットや人といった「主体」とみなすから、「仕事を奪う、奪われる」といったイメージにつながる。

アメリカでも「AIが自分の仕事を奪う」といった議論にならないわけではないが、とりわけシリコンバレーでは、AIはツールにすぎず、自分たちが使いこなすものと思われている。Eメールやスマートフォンを使いこなすように、新しく生まれるAIをどんどん使いこなして、無駄な作業はやらなくてすむようにしようという考えを持っているのだ。

例えば、グーグルが開発した「AIY」をご存じだろうか。「Do It Yourself」のDIY(日曜大工)をもじったもので、自分でAIを作るキットだ。段ボールを使って、グーグルホームに搭載されているような音声AIを作れる商品が10ドルで販売されている。音声以外にも、画像認識AIYもある。

自分の手でAIを作る経験をし、「毎日自分が使っているアレクサは、こんなふうにできているのだ」と知ると、「なんだ。音声AIって、ただのプログラミングなのね」と幼い子どもでも理解できる。

「AI=よくわからないブラックボックス」ではなく、AIを作るのは自分たち人間で、AIに指示を与えているのも人間であるということがわかると、「AIには意思があって人間を超えるのか?」とか「AIは私の仕事を奪うのか?」といった議論から離れることができるだろう。

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