株価崩落を2019年に招くこれだけの波乱要素 マネー収縮に加え米中経済の減速を警戒せよ
藤戸氏はこの先の展開について、「ITバブルやリーマンショック前のバブルに比べると、株価はフェアバリューに近い。かつてのようなドーン、ドーンときて8000円といった下げはないが、何らかのショックでいったん大きく下げてあとは往来相場になるのではないか」と予想する。
マネーの収縮で企業の資金繰りへの影響も懸念される。マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストは「国際決済銀行によれば、低金利を背景にゾンビ企業(利益で利払いがまかなえない企業)が延命しており、その上場企業に占める比率は12%と過去30年で最も比率が高くなっている。そのすべてが破綻するわけではないが、低金利で借り入れを膨らませて成長を続けることは難しくなる」と見る。
株式市場に対する強気派の主張は「アメリカ経済は強い」というものだ。しかし、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、アメリカ経済はバブル頼みの景気回復を繰り返しており、実態は長期停滞に陥っていると考える。そして「過去20年でアメリカが完全雇用に達したのは、2000年のITバブルと2005~2007年のサブプライムバブル期だけであり、今回もバブルを起こすことで完全雇用を達成した」と指摘する。
仮に、パウエル議長が利上げなど金融の引き締めをストップしても、より大きなバブルを作るだけで、いずれは崩壊を余儀なくされるとの見方だ。
市場が注目するもう1つの焦点は中国経済の動向だ。減速懸念が強まる中、中国が預金準備率の引き下げ(金融緩和)と、追加的な景気対策の検討を発表したことも市場に好感された。しかし、輸出の悪化を懸念して内需振興策を採用すると、過剰設備や過剰債務が積み上がる可能性がある。中国は不良債権を抱えており、本来は構造改革を進めなければならない状態にある。
前出の三菱UFJモルガン・スタンレーの藤戸氏は「中国は、年初には必ず景気支援策などの明るい話が出てくる。だが、投資家は新車販売台数やスマートフォンの出荷台数など民間の統計をしっかり見ていく必要がある。そして、これらが売れなくなると、当然、中国依存度の高い日本企業の業績にも影響が出てくる」という。
アメリカからも資金が引き揚げられていく
過去10年に及ぶ金融緩和で起きたのは、日本やドイツなど経常黒字で低金利の債権大国から、経常赤字で最大の債務国であるアメリカや高成長の新興国・資源国への資金流入だ。さらに、アメリカも膨大なマネーを成長期待の高い新興国や資源国に投じた。だが、2018年には新興国・資源国から資金が引き揚げられ、アメリカに還流した。
この先はアメリカ経済においても減税などの押し上げ効果が剥落し、追加関税による輸入物価高など悪材料が影響してくる。米中の貿易協議の期限だが、トランプ政権が簡単に妥協するとは考えにくい。
アメリカ・中国の景気減速や後退のリスクが再び強く意識されれば、世界の市場がリスクオフモードに入る。いよいよアメリカからも資金が引き揚げられ、日本やドイツに資金が戻る動きが起きてくると予想される。株式やクレジット投資(信用リスクの高い債券投資や融資)といったリスクを取る動きは縮小し、資金は債券やキャッシュに戻っていくだろう。
それだけに、パウエルFRB議長の舵取りも容易ではない。株式市場は景気の先行指標であり、FRBが重視する雇用指標は遅行指標だ。株価が崩落しても、雇用が悪化しないなかでは、利上げの停止など市場の期待どおりに行動することは難しい。3月の会合で利上げを見送っても、6月には利上げが実施されるかもしれない。
ここから先はアメリカ・中国の成長率(GDP)だけでなく、個別の市場リスクに目を凝らしていくべきだろう。例えば、1月23日に財務省が公表した貿易統計では、中国向けの半導体等製造装置輸出(2018年12月)が金額ベースで前年同月比34.3%減となった(同11月は同5.1%減、同10月は同8.8%増)。これ以外にも、各業界の統計や企業業績などから、異変が生じていないかどうかをより注意深く見ていく必要がある。
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