絶好調Netflixが「映画館に敵視される」事情 映画「ROMA」の成功の裏にある劇場主との衝突
Netflix(ネットフリックス)が、ついに野望を果たそうとしている。1月22日(現地時間)、今年度のアカデミー賞にネットフリックスオリジナル作品『ROMA/ローマ』(2018年)が、作品部門を含む最多10部門で候補入りしたのだ。同社がオスカー作品部門に食い込むのは創業以来、初めてのことである。
「アカデミー賞」はネットフリックスの長年の夢
ここ数年、オリジナル映画製作に取り組んできたネットフリックスはオスカーキャンペーンにも非常に力を入れてきた。オスカーの資格を得るためには、12月31日までに最低1週間、アメリカ国内のどこかで劇場公開されなければならない。
そのため『ビースト・オブ・ノー・ネーション』(2015年)や『マッドバウンド 哀しき友情』(2017年)、アンジェリーナ・ジョリーが監督したクメール語の『最初に父が殺された』(2017年)など、ネットフリックスが賞狙いと位置づけた作品は大都市のごく限られた数の映画館でストリーミング開始と同時に上映されている。その中で『マッドバウンド』だけは助演女優部門などで候補入りしたが、結局、受賞には至らなかった。
そこで、彼らはもう一歩踏み込んだ。『ゼロ・グラビティ』(2013年)などを代表作に持つ人気監督のアルフォンソ・キュアロンの『ROMA』をはじめとする数本の作品に限り、ストリーミングに先立って1週間から3週間ほど劇場公開のみの期間を設けることにしたのだ。それも、アワードシーズンがちょうど盛り上がる頃。ホリデーシーズンの真っ最中でもある11月後半から12月上旬という時期だ。そこには「ストリーミングで見る作品」というイメージが薄れ、シリアス度が増すだろうというもくろみがある。
もちろん、マーケティングの追い打ちもすごい。もともとふんだんに宣伝費をかけるネットフリックスだが、とくに『ROMA』に関しては、新聞広告が毎日のように出れば、看板は街中いたるところで見て、力の入れようは早くから尋常でなかった。NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の試合中継など、最も費用がかかる番組内でCMも放映されていた。
その効果と、何よりもヴェネツィア映画祭で最高賞まで取った作品自体のすばらしさによって、今作は、ゴールデン・グローブで外国映画部門と監督部門をダブル受賞した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら