「カメラを止めるな!」俳優の波瀾万丈な生き様 濱津隆之「芸人、DJを経て役者になるまで」

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「後悔したくなかったんです。僕が興味を引かれたのは、芸能と音楽だけだったので、そのどちらかで絶対に食っていきたい、って思っていました。ありがたいことに、親からも『人様に迷惑かけないようにしなさい』としか言われなかったので、自由にさせてもらいました」

がっつりアルバイトをしながらだったので、金銭面で困ることはなかった。恋人もいなかったので、結婚のことなどを考える必要もない。自分は何をしたいか? という純然たる思いに従っていったのだった。

当時を振り返るとき、それまで穏やかだった濱津さんの口調が、不意に熱を帯びた。彼にとって大きな決断であったことがうかがえる。

俳優を目指し養成所へ、役者デビューは31歳

役者の道を選んだのは、芸人時代に、コントでキャラクターを演じていたことを思い出したから。自分は役を演じることが好きなのかもしれない、と考え養成所に。レッスンを受け、エキストラなどに出演していく。やがて先輩の紹介で、舞台で役者デビューすることになった。31歳の頃だった。

「家族もののコメディで、僕は兄弟の1人を演じました。このときに改めて、自分はコメディが好きなんだなと感じましたね。それからは自分でも、役者を募集している劇団を探すようになって。年1~2回のペースで、小劇場を中心とした舞台に出演していきました」

こうして役者としての活動を開始する。そして2017年、活動の幅を広げようと、あるオーディションに参加したことが濱津さんの運命を変えた。俳優や映画監督を養成するENBUゼミナールが主催の「CINEMA PROJECT」だ。

このプロジェクトは、若手監督がオーディションを開催し、合格した人々は作品に出演できるというもの。参加した濱津さんは、後に『カメ止め』を制作する上田慎一郎監督からのお題で、ほかの参加者とペアになり、“怒りながら相手をほめる”という不思議な演技などを行う。手ごたえはなかったというが、見事合格し、『カメ止め』の主演に抜擢されたのだった。

しかし当時を振り返る濱津さんは、どこまでも謙虚だ。

「自分が主役と言っていただいていますけど、12人のキャストでつくった映画なので。僕が主役を勝ち取った、という感覚はありません」

続けて、このオーディションに参加し、『カメ止め』への出演につながったことは、奇跡の連続なのだと振り返る。

「本当は、前の年に実施されたCINEMA PROJECTのオーディションを受けようとしていたんです。監督が知り合いで、好きな方だったので。でも都合が合わず、じゃあ次の年に受けてみようとなったんです。前の年に受けていたら、翌年の参加はなかったかもしれないし、何が起こるか本当にわからないですね」

『カメ止め』の大ヒットで、濱津さんの生活は一変した。バラエティを中心にテレビ出演のオファーが殺到。俳優としての依頼も少しずつ増えているという。街を歩くと声を掛けられるようになり、アルバイト生活も卒業した。これまでフリーで活動していたが、芸能事務所からオファーも届いている。

しかし濱津さんは、天狗になったり、舞い上がったりすることはない。『カメ止め』のブームが落ち着いた後も、役者として活躍できていることが目標だと、謙虚な笑顔を浮かべた。

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