1年前、超低空飛行が続く日本、ブレグジットや債務問題などで混乱が続く欧州、明らかに成長のペースが鈍化した新興国を尻目に、アメリカ経済は独り勝ちの様相を呈していた。米株式市場も一本調子の右肩上がり相場が続いた2017年の流れを受け、底堅い景気動向を背景に2018年も株価の上昇基調は続くと誰もが思っていた。
ところが、2018年早々の2月初旬、ドル安と長期金利の上昇を背景に株価が急落。
リーマンショック以来の大幅な相場変動は「適温相場」に浸っていた投資家を必要以上に動揺させ、その余波は日本、アジア、欧州と世界中に連鎖する。
動揺したのは人間だけではない。高度にプログラム化されたシステム売買では想定以上の変動が加わると自動で発注される仕組みになっている。
ヘッジファンドなどは、このシステム売買を通じて、市場のわずかの変化をも収益につなげるような仕組みを構築してきた。
幾度となく訪れた波乱
その取引の対象の1つが市場の変動を測るVIX(恐怖)指数で、2017年の1年間を通して9~15で推移してきたが、わずか1日で一気に37まで急上昇。この急激な変動にコンピューターがプログラムどおり非常時の仕事をきっちり成し遂げたことで、混乱に拍車がかかった。
ただ、そこはアメリカ。経済のファンダメンタルズは底堅く、企業業績も好調だっただけに、混乱は程なく鎮静化。10年国債利回りも2.9%前後で高止まりながら安定し、株価も再び上昇軌道に復帰、秋には最高値を更新するに至っていた。
しかし波乱は再度訪れる。9月にFRB(米連邦準備制度理事会)が3回目の利上げを実施すると、長期金利は再び上昇。折しも中国経済の先行き不安が高まっているところに米中貿易摩擦が加わり、中国の景気減速がアメリカ企業業績へ影響するとの懸念が高まったことが要因となった。
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