【産業天気図・造船・重機】造船受注がストップ、石油下落・金融危機でプラントにも不安広がり、天気は「曇り」模様

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予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

造船業界の2008年度後半は曇り。09年度前半も曇りだが、今にも雨が落ちてくる空模様となる。
 
 造船の受注状況は様変わりとなった。海運会社は海運市況の暴落から新規発注を見合わせる一方、造船会社も厚板価格の高騰→建造コスト増から受注に慎重になり、両者にらみ合いが続いている。08年4~9月期、三井造船<7003>のバラ積み標準船は前年の25隻から8隻に落ち込んだ。国際金融危機が“爆発”した9月以降はさらに厳しく、世界最大の造船会社・現代重工(韓国)でさえ、10月、11月は新規受注ゼロとなっている。
 
 ただ、造船各社は直前までの海運大ブームでいずれも3~5年間分の受注残を抱えている。08年度後半も目いっぱいの高操業が続くが、厚板の大幅値上げに直撃され、収益見通しの方も様変わり。08年度は黒字を確保するはずだった川崎重工<7012>、IHI<7013>の造船部門はともに水面下に沈み、三井造船は会社全体の収益も大幅下方修正することになった。
 
 一方、プラント分野はエネルギー関連を中心に08年度上期はなお旺盛な需要を享受した。ガスタービンを筆頭に三菱重工<7011>はエネルギー部門の08年度受注額を1・3兆円(前期1・2兆円)に増額し、原油・ガスの洋上生産設備のエンジニアリング会社、三井海洋開発<6269>は史上最高4000億円(前期比3倍)の受注を確実にした。が、ここにも原油価格急落と国際金融危機が不安な影を落とし始めている。産油国は今後、需給調整のために新規投資を抑制すると見られるし、プロジェクトファイナンスの組成が難しくなれば、IPP(独立電力事業者)など民間プロジェットは急ブレーキがかかる。09年度のプラント受注は反落懸念濃厚だ。現に、受注絶好調の三井海洋開発でさえ、チャーターを内定していた石油会社が資金繰りに窮し、洋上設備1基が立ち往生する事態に直面している。
 
 また、重工業分野の「希望の星」と目されてきた航空機分野の雲行きも怪しくなった。三菱重工が主翼を担当するなど、日本側の生産シェアが35%にのぼるボーイングの最新鋭機787は近く4度目の納入延期を発表する。最初の計画から2年以上の遅れ。生産開始当初は赤字のため、当面、787に参加する重工各社の収益には響かないが、中期的な資金回収計画は完全に狂ってしまう。09年度は時間が経つにつれ、いっそう暗雲が広がる年になりそうだ。
(梅沢 正邦)

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