恋人が常に切れない43歳女性の結婚のリアル 3人目の夫は「ご先祖からのご褒美」

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話してみると、健太さんは綾乃さん好みの「文系インテリ」の会社員だった。歴史関係の本をたくさん読んでいるらしい。人見知りなので初対面だと悪い印象を与えてしまうこともわかった。

2人はすぐに付き合い始め、1年も経たずに結婚。綾乃さんはこれから子どもを作るつもりはないので、その点だけは健太さんに確認をしたうえでの結婚だ。

40歳を超えるまで独身だった健太さんは、家事や趣味にもこだわりが強い。女友達はいるけれど恋人は長い間いなかったという。

「緩い私ならば一緒に生活できるかも、と思ったみたいです。実際、2LDKの家は彼の本やマンガ、DVDであふれています。私の部屋はありません。クローゼットの半分と、タンスの3段分だけが私のテリトリーです。女の生活を何だと思っているんでしょうか(笑)」

健太さんは趣味の本やDVD以外は節約家で外食はめったにしない。自分できっちりと自炊をして暮らしてきた。一方の綾乃さんは「宵越しの銭は持たない」タイプで、一人でいるときはつねに外食。結婚当初は金銭感覚の合わなさに戸惑った。

「でも、今では穏やかに過ごせていて自分でもびっくりしています。私もお金にしっかりするようになりました。お菓子やパンを手作りするのも面白いものですね。自分一人だったらダラダラするだけですけど、彼が食べてくれるならゴハンを作るのも張り合いがあります」

繁盛していたバーは閉店して、20年ぶりに勤め人になった。週2日の夜勤の仕事だ。

「彼は独身生活が長かったので、私が夜にいない日を作ってあげるのも大事かなと思っています。アダルトビデオが好きみたいだからです」

セックスも嫌いじゃないけれど性欲は自分で処理するほうが気楽だという男性は少なくない気がする。この「自由」がなくなるから共同生活に踏み出さない人もゼロではないだろう。経験豊富な綾乃さんは男性の微妙だけど重要な問題を察することができるのだ。

恋愛ではなく、「結婚」に必要なもの

ただし、セックスレスは困る。綾乃さんのほうが欲求不満になり、浮気をしかねないからだ。寝室は一緒にすることを綾乃さんのほうから要求し、月1回は死守してもらっている。

性的には淡白な健太さんだが、生活全般でしっかりしていて、毎朝の出勤時には手作り弁当と「ほっぺちゅー」を求めるほど綾乃さんに懐いている。綾乃さんは生活も規則正しくなり、そんな人生に導いてくれた健太さんへの尊敬と愛情があふれ出す。

「まじめで女慣れしていない彼が、すれっからしの私を気に入ってくれたこと自体が今でも不思議です。ご先祖様からのご褒美かな? ありがたいです」

尊敬や愛情は恋愛に不可欠だが、結婚に必要なのは相手への感謝だと筆者は思う。理由はわからないけれど、すばらしい人が自分のそばにいてくれる。こんな自分を愛してくれている。

このうれしくて申し訳ないような気持ち。お返しができるとは思わないが、せめて誠実で明朗なパートナーでいよう――。謙虚になった綾乃さんの3度目の結婚生活は長続きする気がする。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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