受けるのはタダだから。思いついたら行ってみよう
仲：またミーハーな関心と、戦略的な行動ですね（笑）。断った理由はなんですか？ 奥田さんはパイロットにしても、投資銀行にしても、心が固まる前に、けっこう簡単な気持ちで受けに行くほうなんですか？ 採用を受けるまで、悩む人も多いようですけど。
奥田：受けるのはタダですからね（笑）。ミーハーですし、思いついたら行ってみようという行動パターンなのだと思います。投資銀行を断った理由は、最終的には、やりたいという強い思いはそこまでないのに、激務になる生活はどうなんだろうと思ったからですね。一方で、やはりスタートアップにかかわりたいなという思いも強くなってきて、ファイナンスの知識が生かせるところはないかと漠然と考えながら、Wantedlyのサイトを見たわけです。
仲：ありがとうございます（笑）。どうでしたか。
奥田：僕はスタートアップ企業によく求められている、エンジニアのようなスペシャリストでもないですし、ディレクターのような職業経験もなかったんですよね。それにやりたい事業の分野というのも、明確にはありませんでした。だから何か面白いサービスをやっている会社があればいいなという気持ちで、かつ、僕みたいな特別なスキルがないけれど、「スタートアップで働いてみたい人」を受け入れてくれる企業で探していました。そこで、今の会社を見つけました。
「Retty」はよく使っているサービスだったので、まずは話が聞いてみたいなというくらいの気持ちで、会社訪問をしました。ところが行ってみたら代表が、これからやろうとしている事業や、会社の数字をかなりオープンに見せてくれて、どんどん話しが本気になっていきまして（笑）。それで、「土曜だけ、週に１回だけ、オフィスに来ない？」という段階になったんです。
仲：いいですね。代表も本人の仕事ぶりを見ることができるし、奥田さんも会社のことがよりわかって、お互いにとっていいお試し期間ですよね。
奥田：そうですね、それで４〜５回通ったところで、「Rettyに本格的に参画するのはどう？」と誘われました。そのときはすでにやりたい気持ちも強くなっていたので、前向きに考えようと思いましたが、よく考えたら、実際、自分が何をやるかも決まっていないし、条件も決まっていなかったんですね。それで、数日後、あらためて具体的な僕の役割や条件を代表と整理して、その３日後に「行きます」と返事をしました。
最初がいきなり面接だったら、たぶん来てなかったと思うのですが、食事をしたり、オフィスに遊びに行ったり、数回セッションして、代表や経営チームの考えや優秀さもわかったからこそ、決められた転職でしたね。
仲：当時、勤めていた会社には何と言って報告したのですか？
奥田：以前、一度投資銀行に行こうかと考えたときに上司に相談していたこともあって、驚かれませんでした。逆に、すごく理解のある方で、「（転職の時期が）今なんだね。頑張れ」と応援してもらいました。会社という“ハコ”そのものには、あまり愛着を持つことはなかったのですが、“人”という面ではすごく大きなものを得られたと思っています。自分がいた部署の方たちとは、今でも月１回くらい飲みに行ったりしますからね。
仲：それにしても、三菱商事という、まさに将来が約束されているようなイメージがある大企業ですよね。スタートアップに転職するとなって、生活面で不安になったり、悩んだりしませんでしたか？
奥田：それはなかったですね。そもそも僕自身、終身雇用が当たり前だという感覚がまったくないからかもしれません。給与は多少下がるかもしれないけれど、体を壊さなければ仕事は絶対あると思っています。仲さんは違いましたか。
仲：私はすごい悩んだほうですよ。外資の投資銀行だったので、終身雇用が当たり前だとは思っていなかったですけれど、それでもやっぱり悩みましたね。奥田さんみたいにきっぱり言い切れる人はけっこう少ないですよ。どうしてそういう思考になったのでしょうか。（後編に続く）
（後編は12月17日公開です。）
（撮影：梅谷 秀司）
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