「女性の料理が笑われる」TBS番組への違和感 TBS「平成の常識・やって!TRY」は常識的か
早速、TBSに取材を申し込んだところ、番組プロデューサーの王堂健一氏よりメールで回答があった。それによると、コーナーを始めた当初のコンセプトは「母から娘への台所の知恵と技の伝承」だった。初期は母親から何を学んだのかなどを聞きつつ料理してもらって、「大変好評をいただいてきました」と王堂氏。
女性が登場する印象が強いコーナーだが、時代の変化を受け、男性が料理するケースも出てきたという。王堂氏によると、「ある放送では料理に苦戦する女性を一緒にいた男性が手助けして、見事に料理を仕上げたことがあり、完成した料理を2人で味わう姿をほほ笑ましく眺めることもありました」。
「失敗を面白がるだけでなく、TRYしてもらうこと、そしてそれを放送することで、料理の楽しさを知っていただいたり、キッチンでのコミュニケーションのきっかけになってくれたらと、出演者も制作スタッフも心から願い、日々制作しております」(王堂氏)。過去に失敗した女性がその後精進して本物の料理人になり、再出演したこともあるそうだ。
料理ができなくて困るのは女性だけではない
つまり番組側には女性を辱めたり、笑い者にする意図はない、ということだ(実際、出てくる女性たちはあっけらかんとしている)。しかし、出演する大半が女性で、恋愛や結婚について聞きつつ料理技術を試すのは、「女性は料理できなければ恥ずかしい」「料理下手の女性は結婚できない」と主張しているように見えても仕方ないのではないか。
2つ目の要因は、ライフスタイルの多様化に合わなくなっていることだ。共働きが多数派になり、家事をシェアする夫婦も増えた。シングルの男女も多い。女性が皆結婚して主婦になる時代ではなくなっているのに、女性だけが若いうちから料理ができないと恥ずかしい、と決めつけるのは、主婦になる女性が多数派だった昭和の感覚を引きずっていると言わざるをえない。
加えて、今は「料理を作らなくても生きていける」時代でもある。外食や総菜などの選択肢が豊富にあり、むしろ凝った料理などしないほうが安上がりに生きていけるかもしれないほどだ。
一方、料理ができなければ困る可能性は男性にもある。一人暮らしを始めた男性はもちろん、離婚・死別などで妻を亡くした男性も料理しなければならないかもしれない。家族の介護や育児を抱える男性もいる。持病を抱えて食べるものに制約ができることもある。
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