「女性の料理が笑われる」TBS番組への違和感 TBS「平成の常識・やって!TRY」は常識的か

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この回では、歴代の彼氏に作ってきたという27歳会社員で彼氏なしの女性が、別れた彼氏を思い出して泣きそうになりつつ、手際よく料理して作り上げる例もあった。サバの湯通しまでした完成品を友人たちも絶賛。しかしVTR終了後、スタジオでは元NHKニュースキャスターの森本毅郎氏が「歴代の彼氏のおかげだよ!」とツッコむのである。

作り方を知らないがゆえの失敗には、笑いを取れる部分があるのはわかる。放送されるのは、実際に作った人たちの一部だろうから、失敗の仕方がより「面白い人」を選んで放送していると思われる。失敗をネタにするお笑い文化が社会的に共有されているからこそ、「やって!TRY」は30年近く続いてきたのだろう。

声を上げ始めた女性たち

ところが、ここへきて「料理下手な女の子」を笑うコーナーに違和感を覚える声が増えたのには、3つの要因が考えられる。

1つはここ数年盛り上がるフェミニズム・ムーブメントの影響だ。2017年から世界的に広がった#MeToo運動や日本のセクハラ問題。医学部の入試における女性差別問題をめぐる盛んな報道。メディアやSNSで盛り上がる家事の省力化に関する議論。女性だけが家事・育児をする描写のテレビCMの炎上――。女性たちは今、差別と感じることに対して敏感になり、その問題意識は社会的にも共有されるようになっているのだ。

世界でも日本でも女性たちの声が大きくなったのは、インターネットを通じて個人が発信しやすくなり、連帯がたやすくなったからだろう。また、グローバリゼーションや移民の流入などによって、今までの常識が通用しなくなってきたことも大きい。

旧来の価値観が揺るがされ新しい時代のあり方を模索する中で、男性中心の社会システムが、「このままでいいのか」と問われ始めたのだ。日本の場合は、子育て世代の女性も働く時代になり、専業主婦が家庭にいることを前提とした既存のシステムが成立しがたくなっていることも、声が大きくなる原因の1つだろう。

女性が差別に敏感になって、ふと「やって!TRY」は、女性を笑いものにする企画ではないかと思い至る。こうした中で、気になるのが番組制作側は、どういう意図を持って、今もこの番組を放送しているかである。

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