増税対策に景気対策を併せるのがダメなわけ 消費者には負担増を正直に説明すべきだ

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軽減税率や保育無償化などに加えて19年度予算では増税を相殺する規模の財政支出が行われる(写真:ロイター/Toru Hanai)

消費税率は2019年10月から10%に引き上げられることになっており、2019年度予算では増税による需要減少を補うための対策に2兆円が投じられる。2014年4月に消費税率が引き上げられた際には、予想外に税率引き上げ前の駆け込み需要の規模が大きかったことや、賃金上昇が物価上昇に追いつかなかったことから、消費の低迷が長引いた。大幅な円安にもかかわらず輸出の伸びが鈍かったことも加わって、景気の足踏み状態が続いた。

「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」ということわざがあるが、前回失敗したという意識が強すぎて、今回の増税対策は過剰なほどのものになっているというべきだろう。

そもそも前回増税よりも家計負担は少ない

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このように判断する理由は、第1に今回の増税では消費税率の引き上げ幅が小さいことがある。前回2014年は5%から8%へと3%ポイント税率を引き上げたが、今回の引き上げは8%から10%への2%ポイントで、引き上げ幅が小さく、税率引き上げによる家計の負担増も3分の2だ。

第2に、来年度予算で増税の影響緩和策を決める前から、家計負担の増加幅が小さいことは周知の事実だったことがある。消費税率引き上げと同時に軽減税率が導入されることで、税率引き上げによる家計負担の増加幅は約1兆円縮小する。さらに、幼児教育・保育の無償化なども同時に実施されて家計負担の軽減になる。このため、2018年4月に日本銀行が発表した試算では、ネットの家計負担増は2.2兆円程度と試算されていた。

これに対して、来年度予算では、ポイント還元、プレミアム付き商品券、すまい給付金など2兆円程度の予算規模の対策が講じられており、消費税率引き上げによる家計の負担はほぼ相殺される形になっている。単純化して言えば、消費税率引き上げで増える税収のほとんどすべてが支出されてしまい、財政赤字の削減には回らないことになる。

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