増税対策に景気対策を併せるのがダメなわけ

消費者には負担増を正直に説明すべきだ

日本の場合には、基調的な物価上昇率が低いために企業は値上げが難しい。そのため、政府は中小小売店でも消費税率の引き上げ分を確実に価格に転嫁できるようにという意図を持ち、一斉に税率の引き上げを行う。そのため、ほかの先進諸国に比べてはっきりとした駆け込み需要と反動減が生まれる。

駆け込み需要をできるだけ発生させないように、価格の引き上げ時期の分散などを図ることには意味がある。だが、今回の消費税率引き上げは前回から時間が経っていないこともあり、駆け込み需要自体がそれほど大きくないと見込まれている。筆者の属するニッセイ基礎研究所の試算では、駆け込み需要の規模は1997年の場合が約3.5兆円、2014年は約4兆円とされるのに対して、今回見込まれるのは約2兆円に過ぎない。

そもそも財政再建のために増税をしている

駆け込み需要と反動減の影響がなくなった後でも、増税で実質所得が低下することによる消費水準の低下はずっと残るので、消費水準は増税がなかった場合に比べればずっと低いままである。

消費者が2019年10月から消費税率が引き上げられるということを知らなかったとすれば、駆け込み需要は発生せずにその反動減も起こらないが、増税による実質所得減少に伴う消費減少は必ず発生する。これは消費者の負担で財政赤字を削減しようとしているのだから当然であり、これをなくすには増税をしないか、増税分をほかの形で消費者に還元してしまうかのいずれかしかない。これでは、財政赤字の削減という増税の目的を放棄することになる。消費者には正直に負担増となることを説明すべきだ。

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