無責任政治により失われた「財政均衡」の正論

利益誘導政治でツケは将来世代に

福田赳夫元首相(左)と大平正芳元首相。いずれも財政に対し責任を自覚し危機感を持っていた(写真:共同通信)

今や絶滅危惧種のような存在となってしまっている「財政均衡論」を久しぶりに目にすることができた。財務相の諮問機関である財政制度審議会が先日、公表した「平成31年度予算の編成に関する建議」は、永田町や霞が関の今の空気に逆らうかのように、累積債務が膨れ上がった日本の財政の現状を厳しく批判し、将来世代にツケを残してはならないと唱えている。

多くの審議会は、官僚の作文を委員が追認し、答申や報告書の名前で公表しているため、結局は役所の打ち出したい方針に箔をつけるだけに終わっている。各省は幅広く国民の声を聴いたとして、政策の正統化に利用できる文書となっている。

ところが財政制度審議会の建議は、財務省に一歩距離を置いた独自の存在感を持っている。文章は官僚の作文とは異なり鋭角的な表現にあふれて説得力を持っている。財政健全化を棚に上げて積極財政に走る安倍晋三政権を真っ向から批判している点も際立っている。審議会の提言とはいえ、ここまで激しい内容が公にされると、政権も少しは気にするのではないかと期待をした。

ところがほぼ同じタイミングで安倍首相は今年度の第二次補正予算案の編成を閣議の場で閣僚に指示し、さらには来年10月の消費税率引き上げによる景気低迷を回避するため5%ものポイント還元など、バラマキ策を次々と打ち出している。つまり財政制度審議会の正論は完全に無視されているのだ。

財政制度審議会が指摘する「フリーライダーの圧力」

まず、今回の建議の内容を紹介しよう。

平成時代最後となることから、建議は平成時代の財政を総括している。少子高齢化が進む中、公債残高が積み上がり、一般政府債務残高が対GDP(国内総生産)比238%に達したという数字をあげて、

「平成という時代はこうした厳しい財政状況を後世に押し付けてしまう格好となっている」「人口・社会構造が大きく変化する中で、国・地方を通じ、受益と負担の乖離が徒(いたずら)に拡大し、税財政運営がこうしたゆがんだ圧力に抗(あらが)いきれなかった時代と評価せざるを得ない」

と辛口の評価だ。

さらに「将来の世代はそのツケを負わされ、財政資源は枯渇してしまう。悲劇の主人公は将来の世代であり、現在の世代は将来の世代に責任を負っているのである。平成時代の財政運営をどのように申し開くことができるのであろうか」と嘆いている。徹底した政府批判となっている。

債務残高が増大した原因である国民の受益と負担の不均衡については、「誰しも受け取る便益はできるだけ大きく、被る負担はできるだけ小さくしたいと考えるがゆえに、財政運営は常に受益の拡大と負担の軽減・先送りを求めるフリーライダーの圧力にさらされる」と分析する。

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