日米を襲う「債券バブル崩壊」の恐ろしい結末 株の下落の次に何が待ち受けているのか?
そんな中、この先ダリオ氏の懸念する1937年のパターンが繰り返されるとしても、個人的には、当時のように簡単に戦争経済へ移行するとは思えない。
なぜなら、まず敵がいない。今はアドルフ・ヒトラーのような強烈な帝国主義者は見当たらず、真珠湾攻撃のような出来事も考えにくい。
そして先の世界大戦前は、まず「通貨(安)戦争」があり、それが「貿易(関税)戦争」になり、最後「実弾戦争」になってしまったが、今はグローバル金融経済が育ったことで、もう一つ新たなフェーズ(段階)が生まれた。それが前述の本でダリオ氏が本の中で用いた「キャピタル戦争」である。
マクマスター、コーン氏が言いたかったこととは?
すでに金融市場は国益をかけた戦場になっているとして、基軸通貨ドルを持つアメリカは、必要ならその力で敵対国の経済を封鎖し、インフレを起こして相手国の政権を倒す脅しを常にかけてきた。そんな中、今年中国は人民元建ての原油先物市場を開設した。
今、建玉は増加している。かつてペトロダラーに反旗を翻したサダム・フセインやカダフィ大佐がいた。中国は彼らのような小物などではない。アメリカは自分が世界最大の産油国になってしまったことで、原油に対する政治的コミットはどうなるのかに注目している。
ここで、2017年5月、当時トランプ政権の国防と経済を担当したマクマスター氏とゲーリー・コーン氏が、ウォールストリートジャーナル誌に連名で出した政権広告を紹介しよう。これは当時トランプ政権として世界に向かっての初の意思表明となった。そこで強調されたのは、アメリカファーストはアメリカオンリーの意味ではなく、これからもアメリカは友好国をリードし、世界の平和と繁栄に貢献する、と宣言したものだった。だが、その中に、こんなフレーズがあった。the world is not a “global community” but an arena where nations, nongovernmental actors and businesses engage and compete for advantage.
個人的には、not a “global community”、arena engageの単語の響きは、トランプのアメリカは「実弾戦争」を望まない。だが世界はもはや冷戦終了後のプラスサムで協力的ゲームの理論が支配するグローバル社会ではない。むしろ、今後はマイナスサムで、そこではポーカーテーブルのような非協力的ゲームの理論が展開されるという意思を鮮明に感じた。実際、その後のトランプ政権はそれを地で行ったと思う。だがオバマ政権までのグローバルコミュニティ社会に慣れた友好国は、未だにこのトランプ政権に当惑したままである。
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