宇宙を知る男に学ぶ「宇宙飛行士」になる方法 世界一リアルな話を実際に聞いてみた!

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地球に帰還して間もなく開かれた記者会見の折に、母校の子どもたちへのメッセージを求められ、次のように話をしたことがある。

「君たちと同じように学んで、普通の成績で高校を卒業した。そんな男が6カ月にわたる宇宙ミッションから戻ってきたばかりだ。だからこそ、『自分がやりたいと思うことは、誰に何を言われてもやってみることだ』と言いたいんだ」

宇宙飛行士になるのは簡単ではない。実際、私の人生においてこれほどつらい経験をしたことがない。しかし、これほどやりがいのあることもなかった。その途方もない経験の数々は、生涯、忘れることはないだろう。

宇宙飛行士に必要な能力とは何か?

Q 宇宙飛行士選抜試験で、あなたが選ばれた理由はなんだったと思いますか?

A (ティム氏):これはいい質問なので、自問自答してみた。宇宙飛行士はさまざまなスキルを求められる。調整能力や空間認識能力、記憶力、集中力といった持ち前の資質も含まれるが、宇宙でミッションを行う時間が長くなるにつれて、コミュニケーション能力、協調性、決断力、リーダーシップ、フォロワーシップ、そしてストレスがかかる状況で問題を解決するために働く能力なども重要だ。

幸い私は、陸軍時代にこうしたスキルの多くを身に付けていた。各国の宇宙機関は宇宙飛行士に求められる幅広い資質を見分けるために、それぞれ若干異なる選抜プロセスを開発してきた。

ただ私が2008年に宇宙飛行士に志願した時には、めずらしくESA、NASA(アメリカ航空宇宙局)、CSA(カナダ宇宙庁)、JAXA(日本宇宙航空研究開発機構)が同時に募集を行ったため、各機関の選抜基準は明確に違っていた。

たとえばCSAは、プールの底に沈めたレンガを炎と闘いながら拾ってこさせたり、ストレスの高いテストを実施していた。なかでもいちばん厳しいテストとしては、大西洋の冷たい水が流れ込む部屋でチーム一丸となって流入口をふさがせるというものがあった。

対照的にESAでは身体的負荷は軽かったが、数カ月も宇宙で過ごす資質があるかを確かめる高度な認識力テストと心理的分析が行われた。

各国ともに厳しい身体機能検査(医学検査)や複数回の面接に加え、選考過程では数学、科学、工学、英語といった分野での基礎知識も問う。試験はストレスがかかるように、各テスト間の休憩は短く、合格するには高度なスピードと正確さが求められる。

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