さて、働きやすい会社というと、自分が働く職場での有給休暇や定着率の高さなどを思い浮かべる就活生は、多いかもしれない。
ただ、本当に働きやすい環境とは、国内のオフィスだけではなく、製造業であれば海外子会社の工場での現地従業員や国内外の取引先の働き方などにも配慮する、いわゆる「三方よし」をしっかり築いている会社にこそ存在する。
どこかのドラマのように、自社の正社員だけを厚遇し、取引先などを軽く見る会社は、結果的に業績が落ちていき、最終的に働きにくくなるケースが多い。
会社には規模や業種にかかわらず、社会的責任が存在する。一般的に「CSR(企業の社会的責任)」と呼ばれるが、そこには最低限行うべき課題が多くある。
たとえば、二酸化炭素排出や大気汚染などの環境問題、海外の取引先や工場での児童労働や差別的待遇といった人権問題などへの取り組みが、その一例だ。グローバル化が進むなか、日本国内の従業員だけでなく、幅広い関係者(ステークホルダー)から信頼されることが、「よい会社」になるためには欠かせなくなっている。
人材力を経営に生かせるかが重要
近年はこれらの最低レベルは満たしたうえで、さらに次の段階に進んでいくことも求められている。それが、SDGs(持続可能な開発目標)、CSV(共通価値の創造)などだ。
バラバラに語られることもあるが、基本はCSRの最低ライン(守りのCSR)をしっかり行い、そこからさらにさまざまな社会の課題を本業やそれ以外の活動を組み合わせて解決していくこと(攻めのCSR)で、会社はより成長できるという考え方だ。
CSRを社会貢献だけと捉えている人は誤解しているが、以前からSDGsやCSVで言われていることは、CSR活動の一部として認識されていた。
今回、紹介した「人材活用評価」は、信頼される会社になるための基盤である人材力の強さを見るために作っている評価で、毎年発表しているCSR企業ランキングの重要指標となっている。ただ、この力をうまく生かしているかどうかは、ほかの部分も見ないとわからない。
株式投資の世界では、社会から信頼され、さらに将来社会課題を解決し成長が期待できる銘柄を選ぶ、「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」が広がりつつある。
企業分析で、人材活用評価以外の環境(E)、社会性(S)、企業統治(ガバナンス、G)もあわせて見ると、より働きやすい会社を見つけることができるだろう。『CSR企業総覧』には「雇用・人材活用編」と「ESG編」があるので、両者を参考にすると各企業の現状がよくわかる。ぜひご覧いただきたい。
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