経済物理学で予測、株価は2019年初に下落 「逆バブル」シグナルを出す「クラッシュ指数」

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経済物理学では、バブルを「揺れを伴いながら、崩壊する点(臨界点)へと近づいていく系列」としてとらえる。そして、その「臨界点」へ向かっていく過程を「べき乗則」によって指数関数的に変化する「トレンド成分」と、周期運動する「サイクル成分」の重ね合わせであると考える。

上図のように、水準が「べき乗則」的(≒指数関数的)に上昇する過程で、周期的な変動が小さくなって「臨界点」に達したときにバブルが崩壊する、という考え方である(臨界モデル)。この関数と実際の価格変動の「当てはまりのよさ」を比較する(例えば決定係数などの尺度を用いる)ことで、バブルの崩壊のタイミングを予想することができる。

「臨界モデル」を利用した「みずほクラッシュ指数」

ここでは、この「臨界モデル」を用いて株式相場の臨界点到達(=バブル崩壊)の蓋然性の高さを議論したい。

具体的にはTOPIXの過去100営業日のデータを用いて各パラメーターの推計(最小二乗法によるフィッティング)を逐次的に行う。臨界点到達時点の想定は推計期間の10営業日後とした。つまり、過去100営業日のデータから予想される「10営業日後の臨界点到達」の蓋然性を求める推計である。蓋然性のベンチマークは、モデル式に対する当てはまりのよさを示す決定係数とし、この決定係数を「みずほクラッシュ指数」と呼ぶ。指数が大きいほど、10営業日後のバブル崩壊の可能性が高いと想定される。

2017年以降のデータについて推計すると、株価が急落した2018年2月の前の2017年10月~2018年1月は、「みずほクラッシュ指数」が高水準にあったことがわかる。つまり、「10営業日後に臨界点到達」(当時は株価が上昇していたので、バブルの崩壊)の蓋然性が高いというシグナルを、指数は出していた。

また、指数の上昇は限定的ではあったものの2018年5~6月の下落局面の前や、2018年10月の下落局面の前も、一定のシグナルを出していたことがわかる。これらの局面における株価の動きがバブル的であったかどうかは別として、「みずほクラッシュ指数」は株価が下落に転じる局面を予想する指標になりそうだ。

なお、直近でも指数が0.4を超えて上昇しており、臨界点が意識される。ただし、現在は株価上昇期ではなく、むしろ株価が下落しているため、モデルがとらえているのはバブルではなく「逆バブル」である。「臨界モデル」は式全体にかかる符号をマイナスにすれば、市場の下落局面が臨界点(セリング・クライマックス)に達するタイミングを予測するモデルにもなる。

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