アフリカで「ライオン」が激減している真因 生息地もかつての8%に狭まっている

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アフリカでは保護区や国立公園の資金不足の問題に直面し、ライオンなどの野生動物が減少している(写真:mlharing/iStock)

違法な鉱物自然の採掘に違法な森林伐採、密猟だけでも大変なのに、アフリカの自然を守るための国立公園はもう1つの厳しい問題に直面している。大幅な資金不足だ。

この問題をめぐるこれまでで最も広範な分析が、10月22日に『アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)』の電子版で発表された。この論文によれば、アフリカ全土の300カ所近い保護区の90%が資金不足に悩まされている。不足額は総計で少なくとも10億ドルに上るという。

分析にあたった専門家らは、きちんと対応しなければライオンのようなアフリカを象徴する動物の減少にさらに拍車がかかるだろうと警鐘を鳴らしている。一部では、保護区や国立公園そのものがなくなってしまう恐れすらある。

「国立公園はそもそも(国から)守られることになっているのだから大丈夫というのが前提だが」と、自然保護団体「ディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフ」の上級研究員で論文の共著者でもあるジェニファー・ミラーは言う。「保護活動を行うためのリソースがないケースが多い。いわば書類の上だけの公園だ」。

資金難の度合いを野生のライオンで分析

保護区や国立公園がわずかな資金で運営されていること自体は、アフリカの自然保護に関わっている人々にとっては驚くようなことではないと、非営利組織「アフリカン・パークス」のピーター・ファーンヘッド最高経営責任者(CEO)兼共同創立者は言う。アフリカン・パークスはアフリカで15カ所の自然保護区の運営を行っている。

「この論文が非常に有用な点は、問題を具体的な数字で示したところだ」とファーンヘッドは言う(今回の研究にファーンヘッドは関係していない)。

今回の分析では、アフリカの国立公園の資金難の度合いを示す物差しとして野生のライオンを利用した。食物連鎖のいちばん上にいるライオンはいわゆる「アンブレラ種」、つまり生態系が健全であるかどうかを示す指標だからだ。

「もしライオンが安泰ならば、サイを除くほかのすべての種も安泰だ」とピーター・リンゼーは言う。リンゼーはワイルドライフ・コンサベーション・ネットワークでライオン復活ファンド責任者を務めており、この論文の共著者だ(サイが例外扱いなのは、角の需要が非常に高く密猟が多いからだ)。

次ページこの20年で野生のライオンは43%も減少
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