アフリカで「ライオン」が激減している真因 生息地もかつての8%に狭まっている
アフリカのほとんどの地域でライオンは安泰どころではない。この20年で野生のライオンの数は43%も減少、今では2万頭くらいしかいない。生息地もかつての8%にまで狭まっている。
国立公園や保護区ではライオンの生息域の割合は増えているが、今回の論文によれば、最も保護が行き届いた場所であっても、それに見合った数のライオンは暮らしていなかった。リンゼーとミラーがこの分析を始めたのは、ネコ科動物の保護を専門に行う組織パンサラで働いていた時だった。
ライオンの数がその地区における生息可能数(えさとなる動物から算出する)の半分を下回っていたのは、ライオンが生息している国立公園の3分の2以上を占めたという。もし公園が適切に管理されていれば、アフリカのライオンの生息数は現在の4倍になっていた可能性がある。
自然保護区が使える資金の総額を割り出した
研究チームは3つの財務モデルを使い、ライオンの数を少なくとも50%増やすのに必要な資金額を試算。そして各国政府の自然保護予算や民間からの寄付のデータの調査、公園管理者や当局者への聞き取り調査を経て、アフリカの23カ国における自然保護区が使える資金の総額を割り出した。
その結果、予算額が効果的な保護活動を行うために必要な額の20%未満だった国立公園や保護区は全体の88〜94%に上ることがわかった。本来ならば1キロ平方メートルあたり978〜2030ドル必要なところ、実際の予算の平均値はたったの200ドルだった。
アフリカの国立公園や保護区を立て直すつもりなら、必要な金額は合わせて年に12億〜24億ドル。資金不足への対応が行われなければ、そこに住むライオンをはじめとする野生動物の生息数は取り返しのつかない減少に見舞われるだろうとリンゼーらは警告している。
適切な管理が行われなければ、保護区が密猟や家畜の違法な侵入、土地の収奪、違法な鉱物自然の採掘や森林伐採に見舞われるのは避けられない。
誰もが使える入会地的な扱いになってひどいことになる、とリンゼーは言う。「野生動物に誰でもアクセスできるようになれば、われ先にと密猟が行われるだろう」。
野生動物の数が急速に減少している国立公園や保護区は数多い。「状況が変わらない限り歯止めがかかるわけがない」と、ワイルドライフ・コンサベーション・ソサエティのアフリカ責任者を務めるティム・ティアーは言う(今回の研究にティアーは関係していない)。
「アフリカを象徴するような多くの種を今後も見たいと思うなら、この論文の問題提起は明らか。われわれは投資をし続けるやり方を変えなければならないということだ」
このままいけば、人間にとってもいいことはないとリンゼーは言う。
健全な生態系は、河川流域の保護や二酸化炭素の貯留など多くの利点をもたらしてくれる。アフリカでは国立公園や保護区が観光を通じて雇用の創出や経済成長、地域おこしに貢献している。アフリカにおける観光業は規模にして340億ドル。その多くが野生動物と結びついている。