元広報の彼女が食品ロスを社会に訴える理由 1つ2つの組織で解決できないが是正はできる
――業界の上下関係まで意識して書いているのが新鮮でした。
食品メーカーを辞めたときから、業界のヒエラルキーや商慣習によって生まれる食品ロスがあると感じてきました。
「食品ロスを生み出す『欠品ペナルティ』は必要?商売の原点を大切にするスーパーの事例」という記事を書いたのは、眠っている良い事例を掘り起こして、これがあるべき姿なんじゃないの? と問いたかったから。
小売店から発注を受けた分、納品できなくなった場合に支払う食品メーカーの欠品ペナルティ。ここを是正することで食品ロスは減る。すぐには変わらないけど、買う方にも売る方にも気づきを与えたいんです。広報の仕事を14年ほどやっていて、社内でも気づいていない良い事例を見つけ出す経験が、いまにつながっていると感じています。
――世の中にポジティブな事例を出すこと、これはおかしいと問題提起すること、どちらに重きを置いていますか?
難しいですが、偏らないようにはしています。「暴く」話ばかりだと気持ちが暗くなっちゃうというのもありますね。
ただ、マスメディアにはできない発信は意識しています。全国展開しているコンビニなどの大手企業は、マスメディアにとって広告のクライアントでもあるので、私からみると切り込んでいない。また、専門的な視点でみると案外間違った記事もある。そういった報道を指摘する記事も書いています。
――講演活動も精力的にしている印象ですが、書くことと両立するのは大変では?
講演は月によって波があって、10月11月は連続していました。しかも、対象が高校生、一般の市民、食品メーカーの社員、スーパーの社長と立場もバラバラですし、10代から80代まで年齢もバラバラ。移動やそれぞれに合わせた話し方、資料を用意することが大変ですね。
でも講演と取材をうまく組み合わせています。長野県で講演があった際は、前々から取材したかった飯田市のリンゴ農家を取材しました。講演でとったアンケートが記事のデータになることもあります。
「情報は発信するところに集まる」
――記事の反響で印象に残ったものは?
コンビニの記事です。スーパーについて書いた後、Yahoo!ニュース個人の編集からコンビニの記事はどうですかと提案してもらいました。言われなかったら気づかなかった視点なので、チャンスをもらったと思っています。
全国のコンビニのオーナーからメールやSNSで、「うちはこうです」「書いてくれてありがとう」といった反響がありました。本部の人だろうなという人からはクレームのようなものも。「情報は発信するところに集まる」という言葉を実感しました。
そしてもっと根深い問題にも気付きました。オーナーに取材してみると「人間らしい暮らしがしたい」という言葉が出てくる。根深い労使関係の問題があって、聞いていくうちにどんどん食品ロスの話じゃなくなっていく。それも大きかったです。