「伊勢丹府中店」、地元民が見た寂しい末路

食品売り場とレストラン以外は店員ばかり…

2019年9月の閉店が決まった伊勢丹府中店は典型的な郊外型百貨店だった(撮影:尾形文繁)

婦人衣料や食品、レストラン、催事でしか客を集められない百貨店(デパート)というビジネスモデルは、今や時代後れだろう。特に郊外店では顕著だ。それでも有名百貨店があるかないかは、その街の”格”を表す。

このほど2019年9月閉店が決まった伊勢丹府中店は、1996年4月に開店した。売り場面積は2万9416平方メートル(ほかに旧地権者を中心とする専門店街「フォーリス」8069平方メートルが同居する)。地下には府中市営駐車場がある。東京都府中市の人口は約26万人だ。周囲の街から顧客を呼び込む土地柄でもなく、開店当時から市民に「何で伊勢丹が来るの?」と嬉しさとともに意外感を抱かせていた。

2016年から閉店候補の一角に挙がった

伊勢丹府中店は府中市が計画した、京王線府中駅前地区再開発の目玉店舗だった。元々は戦後以来の低層の雑店舗が軒を連ねていた。府中市の再開発計画では「駅前B地区」と呼ばれている。この地区の地権者が府中市の音頭で集まり、「フォルマ」と呼ばれる組合が再開発ビル(地上8階)を建設、キーテナントとして伊勢丹府中店の誘致に成功した。

1996年といえば日本の生産年齢人口がピークを迎える時期で、バブル崩壊後とはいえ、日本経済と百貨店の前途にまだ明るい未来を描くことができた時期である。開店直前には伊勢丹も不安を感じるようになったが、府中市が地下3階の市営駐車場を建設することで開業の後押しをする。当時は年商240億円が損益分岐点の売り上げとささやかれたが、2017年度の売り上げは149億円にとどまった。

開店直後のハネムーン時期を除くと、「地下の食品売り場と最上階(8階)のレストラン街以外の階は客より店員のほうが多い」(ある府中市民)という状態が続いた。おそらく開店以来、黒字になった年はないかと推測される。

すでに2016年から伊勢丹府中店は閉店候補になっていた(2016年9月7日付東洋経済オンライン「判明!これが三越伊勢丹の『閉店リスト』だ!」)。それから約3年延命するのは、不採算店閉鎖に前向きだった三越伊勢丹ホールディングスの大西洋前社長が2017年に退陣したこと、社内の主導権争い、さらに店舗を所有するフォルマとの契約関係や、府中市と関わる地元政治家との調整などがあったと推測される。

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