「伊勢丹府中店」、地元民が見た寂しい末路 食品売り場とレストラン以外は店員ばかり…

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百貨店という業態は、伊勢丹府中店のように自社店舗ではなく賃貸店舗のケースだと、テナントを入れることでテナント料をとる「サブリース」という形態になる。婦人衣料では顕著だ。ただ、有名テナントは売り上げが見込める伊勢丹新宿店には入るものの、あまり期待できない郊外店への出店は及び腰になる。

次第に府中店には有名テナントが減り、府中市民からは「伊勢丹らしさを感じなくなった」という声も出ていた。数年前には「伊勢丹とフォーリスで利益を上げている店舗は、フォーリス1階にある回転寿司店だけではないか」(地元有力者)という厳しい声もあった。

府中市は京王線府中駅前再開発に力を注いだ。2017年にはマンション・店舗複合のビルが完成して、事業が終了。そのめでたい時期に目玉店舗の伊勢丹府中店の閉鎖が決まったことになる。

中心市街地から離れたヨーカ堂の反撃

伊勢丹府中店から徒歩数分のJR南武線府中本町駅前には、1976年に開業、2010年に地元との交通渋滞対策協議や遺跡調査などが整わずに移転・拡大が頓挫し閉鎖に追い込まれた、イトーヨーカ堂府中店があった。このとき府中市には、中心商業地を保護するため、ヨーカ堂の店舗移転・拡大を歓迎しない雰囲気があった。ヨーカ堂はとても不満だったはずだ。

ところがヨーカ堂は、府中市の中心市街地から離れた西武多摩川線多磨駅近くにある東京外国語大学キャンパス北側に、延べ床面積約12万平方メートルという巨大ショッピングセンター(SC)「アリオ」を2022年開店で計画しているという(「都市商業研究所」による)。

郊外にしては地価が高いことから、イオングループに代表される巨大SCの影響を受けず、これまで空洞化しなかった府中市の中心商業地。だが今後は、伊勢丹府中店の閉店に続き、新たな試練を迎えるだろう。

収益源の細った郊外型店舗が次々閉鎖される中、百貨店というビジネスモデルが通用するのは、東京や大阪の中心市街地のみという厳しい現実。伊勢丹府中店の末路はそれを冷酷に突きつけている。

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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