北朝鮮ナンバー2の失脚は自然な流れ? 「不正腐敗の撲滅」と「世代交代」に抗せなかった

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北朝鮮はこれまで、内閣が管理する第1経済、軍部など国防産業を総称する第2経済があり、さらに今後の経済開発に必要な資金を獲得する第3経済が生じたとされている。しかも、この第3経済を主に管理していたのが、2人の高官が処刑されたという労働党行政部だった。外資の誘致をはじめ経済開発にかかわる部署であれば企業との付き合いも増え、不正腐敗の温床になりうる可能性があった。

 経済改善を担う部署を管理していた張成沢

韓国・国民大学の鄭昌鉉教授は、「金第1書記はこれまで、現地指導を繰り返すたびに党幹部の規律を正すように指摘してきた。党機関紙の『労働新聞』でも、『今は外国から押し寄せる敵が怖いではなく、社会主義のなかで成長してきた幹部の不正腐敗、官僚化、貴族化が問題だ』と訴えるなど、党幹部らの不正腐敗には神経を使ってきた」と指摘する。

であれば、その不正腐敗の温床となる行政部の幹部が処刑されたこと、しかもそのトップである行政部長が張成沢であったことは、「最高指導者の親戚が掌握する部署と言えども不正腐敗を許さない、人民に奉仕しない幹部は容赦しないというシグナル」(鄭教授)との見方も十分に説得力を持つ。

さらに、張成沢の失脚が事実であれば、それは北朝鮮幹部らの世代交代という流れと脈を通じるとも言える。それは、金第1書記の思惑とも一致する。

祖父、父親と続く「遺訓政治」を掲げる現政権にとって、古参幹部らは自らの地位を支える階層でもある。同時に金第1書記は、立案・実施される政策、特に経済政策については、社会主義を堅持しながらも「世界の流れ」に合わせて現場の特性に合ったことを行うよう、党幹部らに何度も訴えている。それには、既存の思考や枠に囚われることなく人民のために奉仕する幹部が必要であり、このような発言は北朝鮮メディアでも何度も紹介されている。

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