ティップネス、あえて24時間ジム出す危機感 24時間ジム旋風で変わるフィットネス業界②

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ーーさらに24時間ジムの急速な台頭により、総合型はどこも若い会員の獲得に苦労しています。

消費者にとって、数年前まで24時間ジムなんていう選択肢はなかった。シェイプアップしたいと思ったら、ジョギングするか、帰宅途中にある総合フィットネスクラブに通うか、のどちらかだった。それが今、新たな選択肢ができて、若い人たちがそちらを選び始めている。

総合型に入会してくれる若い新規会員が減るだけでなく、総合型の店舗でマシンの使い方を覚えた現役会員が、もっと家の近くにあって、料金も安い24時間ジムに鞍替えするケースも増えていくだろう。24時間ジムが急激に増え始めたのはせいぜいここ2、3年のことなので、これから時間の経過とともに、その影響がもっとはっきりと出てくる。

総合型で進む会員の高齢化

ーーとなると、総合型の未来はそうとうに厳しいように思えます。

あくまで個人としての見解だが、これから先、非常に厳しいと思う。いちばんの変化は会員の高齢化。ティップネスの現在の会員平均年齢は48歳。大手の中ではまだ若いほうだが、それでも以前と比べてかなり平均年齢が上がった。シニアは一度ご入会いただくと継続率が高いので非常にありがたいお客様だが、シニア比率が極端に高まると、若い人の間で「われわれの行くところではない」という評価にもつながる。

総合型はビックボックス型の大きな施設を作り、若者からシニアまで商圏内の全成人をカバーすることを前提とした業態だ。しかし、現実には業界として若い世代の新規入会が減っている。そこに24時間ジムが出てきて、ますます若い人たちの獲得が難しくなった。もはや総合型のあり方やビジネスモデルそのものを変えないと駄目だと思う。

小宮克巳(こみや・かつみ)/フィットネス運営会社や専門コンサルなどを経て、2002年ティップネス入社。店舗開発やマーケティングなど事業全般に携わり、2015年より経営戦略・経営管理担当取締役。ボディビルの元日本代表経験があり、今も週4日はトレーニングに励む(写真:ティップネス)

ーー総合型が生き残るために、どんな対策が有効でしょうか。

それが明確にわかったら、僕も苦労はしない(笑)。スタジオやプール、マシンジムなど各分野に精通した専門スタッフを抱える強みを生かして、もっと専門性を高めたり、月会費とは違った料金体系を取り入れるなど、いろいろな選択肢が考えられる。

流通業界に例えるなら総合型は百貨店で、家の近くにある小型の24時間ジムはコンビニ。かつて多くのお客さんでにぎわった百貨店は今、必死になって生き残りの道を探っている。総合フィットネスクラブも置かれた状況は同じだ。

店舗が存続するかぎり賃料は発生し続けるので、中身を抜本的に変えないといけない。変革にはそうとうな戦略投資が必要になる。その原資を自力で捻出するためにも、僕は24時間ジム業態を絶対にやるべきだと考えたのです。

ーー24時間ジム事業はすでに収益に貢献しているのですか。
 今は大量出店しているので開業費が膨らんでいるが、それでも開業費込みで昨年度に黒字化した。総合型に比べれば1店当たりの利益絶対額は小さいが、店舗数がどんどん増えているので、トータルでは大きな利益絶対額が期待できる。経営としても当面は24時間ジムの出店を最優先する。

ただし、24時間ジムは大きな投資負担や専門スタッフを必要としない分、参入障壁が低く、同じ業態同士の競争がどんどん激しくなる。おそらく、24時間ジムで稼げる期間はおのずと限られるだろう。だから3本目、4本目の新しい柱を作っていく必要がある。それらの新規事業も今、必死に考えているところで、できるだけ早く形にしたい。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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