「大黒柱」として稼ぎ続ける男性たちの本音

働けない妻の背景にある、辞められない夫

ここまで登場してくれた夫たちは「自分で時間や状況をコントロールできること」「自己決定できること」が、しんどいと感じるかどうかのカギだと理解している。しかし、妻のほうがつらそうだと思うのであれば、なんとかもう少し早く帰れないのか。

須藤さんは「妻は平日については諦めているみたいですね。その分休日は私が事務所に子どもを連れていって、子どもが昼寝している間に作業するとか。妻には自由な時間を持ってもらおうとしています」。

妻からずっと「もう少し帰ってきてほしい」と言われているという堀さんの退社時間は子どもが生まれる前は23~24時だった。最近、長時間労働是正の動きもあり少し早くなったとは言うが、「(子どもの夕飯や風呂を手伝える)19時台に家にいられるかというとやはり厳しいです。何曜日は19時に、とか決められるといいんでしょうけど、なかなか……」と歯切れが悪い。平日は帰宅後に夕飯を食べ、皿洗いをしたり洗濯ものを畳むなどの家事はしているというが、「こちらも疲れていると、奥さんにやってほしいなーと思ってしまうこともある」と語る。

長時間働いた後に家事ものしかかってくることに対する正直な感想ではあるが、ここでもかすかに残る違和感。それは、専業主婦だからつらそう、と言いつつ、そのつらい時間を目いっぱい引き延ばしてしまっている夫の働き方は、妻が専業主婦だからこそ成り立つものに見えるからだ。

妻が働き始めようにも、夫の転勤に合わせたために、保育園が確保できず、共働きに戻れない。そして、寺田さんのように働き方を改善しようと転職を検討しても、妻が専業主婦だからこそ、転職できない。男性たちこそ、専業主婦前提社会のループにはまっていないか。

夫婦に負荷のかからない子育て環境を作るべき

預け先がない乳幼児のいる家庭では、妻が専業主婦だから長時間家を空けても大丈夫、ではなく、妻が専業主婦だからこそ夫たちは早く帰って妻の負担を軽減したり自由時間を確保したりしてあげてほしい。

大黒柱プレッシャーについて聞くと、「それほどでもない、むしろ自分が死んだときのほうが心配」と語る夫たち。妻のワンオペ育児がしんどいことを認識はしているが、産後うつや育児ノイローゼで自殺につながることだってあるとまでの危機感はあるだろうか。

寺田さんは「子どもにかかるお金も親の負担が大きすぎる。シングル親家庭とか、究極子どもだけでも生きていけるような制度設計が必要だと思う」とも語った。

堀さんの言うように「専業主婦」か「働くか」というより「リフレッシュする余裕を持ちながら子育てできる環境」、そして妻が専業主婦であれ共働きであれ、男性もまともな働き方ができる社会を作っていく必要がある。

次回は主夫になった男性の視点から専業主婦前提社会を考える。

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カーリング人気萌芽の時代から、平昌五輪での銅メダル獲得まで戦い抜いてきた著者。リーダーとして代表チームを率いつつ、人生の一部としてカーリングを楽しめるにまで至った軌跡や、ママさんカーラーとして子育てで得た学びなどを語る。