「大黒柱」として稼ぎ続ける男性たちの本音

働けない妻の背景にある、辞められない夫

3人の子と妻を養うことに対し、寺田さんは次のように話す。

「稼がなきゃ飢え死にだなと思うことはあるし、転職はしにくいかもしれないですね。一度、転職のお誘いを受けたことがあって、働き方を変えたくて検討もしたのですが、収入が落ちるので断念しました。ただ、もともと育った家庭が貧しくも楽しく、夫婦ともに贅沢をするタイプではないので、子どもは公立で慎ましく家族仲良く、楽しみは週末の家族そろってお母さんのごちそうみたいな生活をしています」

一方で、職場では管理職の立場。若い世代には「奥さんが専業主婦なんて、すごいっすね」と言われるというが、自分たち夫婦はたまたま向き不向きで分業をしているだけ。自分より上の世代の、専業主婦の妻がいることを前提にした働き方には疑問を感じるという。

「自分は妻と完全分業であることで、共働きの同僚に対してアドバンテージがあることは自覚しています。僕は仕事だけしていればいいので、楽だよな、と。子どものお迎えで早く帰りますという社員を不当に低く評価するオジサンもいて、そういう人たちは想像力がないし想像する気もないんだなと不快な気分になります。選択肢が限定されるような制度設計、慣行は少しずつでも変えていくべきだと思います」

より積極的に専業主婦を選択しているケースもある。「もともと妻は専業主婦志望で、それが前提で結婚したので」と話すのは、大手人材系社員の山本さん(30代後半、仮名)。「稼ぎ続けなきゃという意識はある」ものの、プレッシャーは「そこまで感じない」。ただし、「生命保険はちゃんと入りました」「自分が死んだらどうなるということのほうが気になりますね」と家族をおもんぱかる。

山本さんも海外勤務経験者だが、専業主婦なら問題なく転勤に帯同できるというわけでもない。山本さんは妻の2人目出産直前に中国転勤となり、何年になるかが見込めなかったこと、大気汚染の心配があったことから、単身赴任で出発した。

日本にいても多忙で家事育児にはなかなか関われなかった。妻はむしろ山本さんの単身赴任中は実家に戻ることができ、親のサポートを得ながら子育てができて喜んでいたという。途中、何度か帯同してこないかと持ち掛けたが、妻に断られ結局、単身赴任は3年半に及んだ。「さみしかったですよ。通信機器がなかったら顔も忘れられていたのでは」と山本さん。

妻と完全分業をすることによって場所も時間も「無限定」にがむしゃらに働くスタイルが成り立つ一方、そのようなスタイルが家族を離れさせることにもつながっている。

やむをえず専業主婦に

妻が専業主婦になる理由は、積極的なものばかりではない。広告系企業に勤める堀さん(30代前半、仮名)の妻は、非正規で事務として働いていたが、昨年の第1子出産で、育休が取れず専業主婦に。「入社したときから分かっていたことではあったものの、妻は育休が取れれば働き続けたい気持ちはあった」という。

再就職をするには保育園を確保しないといけないが、保育園を確保するには働いている実態がないと加点がつかないことも多い。2人目を考えるとタイミングも計りづらい。

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カーリング人気萌芽の時代から、平昌五輪での銅メダル獲得まで戦い抜いてきた著者。リーダーとして代表チームを率いつつ、人生の一部としてカーリングを楽しめるにまで至った軌跡や、ママさんカーラーとして子育てで得た学びなどを語る。