私が社会人6年目で妊娠したころ、あるいは、育休から復帰し、仕事と育児の両立をしていたころ。周囲の男性同僚たちに「いいなぁ」「ずるい……」と感じたことは、多すぎて数えきれない。
妊娠・出産を経なくても自分の子どもを持てる、あるいは思う存分仕事をして、帰ったらかわいい子どもがきちんとケアを受けることができている。なんとうらやましいことか。そして学生時代からの男友達や同期の男性が専業主婦志向の女性と結婚していくのを見ると「ふーん」と、何か出し抜かれた感覚すら覚えていた。
だったら主夫と結婚すればという声もあるだろうが、大黒柱の気持ちとは、あるいは専業主夫の気持ちとはどのようなものだろうか。
育児をしていると、私の場合は外で働いているほうが楽に思える(もちろん人により、向き不向きや好き嫌いもあるだろうし、大変さは子どもの性質や年齢にもよる)。とりわけ今、3歳の子の幼稚園が冬休み中で家で1日中見ているだけに、未就園児の子どもを抱える専業主婦の大変さは身に染みる。育休中やシンガポールに来てからしばらくは専業主婦状態になった経験から、専業主婦の置かれている状況は比較的身近に感じてきた。
その点、もっとも立場的に共感しづらいのが専業主婦の妻がいる男性たちだ。お会いすることはあっても、もっぱら仕事の話で完結してしまうことも多く、あまりこれまで家庭について深く話を聞いてみることもしてこなかった。
今回は、共働きではなく、専業主婦を妻に持つ男性側へのインタビューから男性側から見た「専業主婦前提社会」を見てみたい。
専業主婦の妻がいるアドバンテージ
マスコミ系勤務の寺田さん(40代半ば、仮名)の妻は専業主婦歴20年あまり。寺田さん曰く、
「妻はバイトは少しやっていた時期があるのですが、外で働くのが向いていないんです。働きたいと言い出したこともないし、心身に不調をきたしそうだから僕も働いてほしいとも思わない。一方、子どもが生まれたときには『天職』『このために生まれてきたのかも』というくらい、家事や育児は向いているみたいです」
3人の子を産み育て、寺田さんの転勤にも帯同し、妻として母として役割を果たしている。
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