生産を一時ストップし補強工事をするか、激しい競争に勝つためそのまま突っ走るか。HBSで取り扱った倫理のケースを思い返し、最終的には補強工事をすることに踏み切った。
バングラデシュで事業を営むのは、先進国では考えられないようなさまざまなリスクが伴う。彼の父は実業家であったが、ビジネスパートナーとの不調和から生じた闘争に巻き込まれ、アシフが9歳のときに亡くなった。さまざまなリスクを認識しながらも、アシフは世界に誇れるバングラデシュ発の企業を生み出そうと懸命だ。彼は国を担ぐくらいの心意気で、将来を見据えている。
中国のカジノから老人ホームへ
ユーシュは、カジノ業界出身というユニークな経歴の持ち主だ。中国で生まれ育ったユーシュは、資本主義の最先端を見たいと思い、マカオ大学に新設されたカジノマネジメント(Gaming Management)を専攻した。卒業後は、マカオのベネチアンホテルでマーケティングを担当した。
しだいにカジノ業界に限界を感じるようになり、より幅広くホスピタリティを学ぶためアメリカに渡り、不動産デベロッパーに就職した。上海に6つ星ホテルを立ち上げるプロジェクトに携わり、このホテルを成功させることで、安かろう悪かろうのメイド・イン・チャイナのイメージを変えるんだと意気込んだという。
プロジェクトが一段落し、中国の故郷に久々に戻ったユーシュは、そこで多くの高齢者が老人ホームのような施設で暮らしていることを目の当たりにした。若い頃は成功していたであろう高齢者が、社会から疎外された老人ホームで寂しそうに暮らしているのを見て、胸が痛んだという。
ユーシュは、マカオを大変革させたビジネスの力をもって、この問題も解決できると思い立ち、HBS留学を決めた。現在は、老人ホームと協力して、老人がさまざまなアクティビティを楽しめるサービスの立ち上げ準備をしている。卒業後にまずはアメリカでローンチし、数年後には自分の故郷にビジネスを持って帰る予定だ。
自分の人生は、蓄えた富や権力で計るのではなく、どれだけの人を幸せにできるかで計りたい。そう願うユーシュは、より多くの高齢者を幸せにするという夢の実現に向けて、新ビジネスを試行錯誤している。
公教育の改革に挑む、元教師
アンマリーは、HBS入学前は教師だった。Teach for Americaという非営利団体を通じて、アメリカの貧困層を対象に教えており、家庭内の問題を抱えた子供たちを相手に、毎日、真剣勝負で向き合っていた。そんな教師の仕事は、決して楽ではなかったが、人生で最も刺激的で学びの多い日々だった。
しかし同時に、ひとりの教師として与えられるインパクトの限界を感じた。公共教育制度を根本から変えていく必要があると思うようになったという。現場の教師としてのミクロな視点しか持ち合わせていなかったため、よりマクロな視点を身に付けるためHBSに進学することを決めた。
現在、彼女はHBSで、社会起業家やベース・オブ・ピラミッドビジネスについて学んでいる。教育はアメリカだけではなく、世界全体の課題だと感じるようになった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら