前田裕二氏「GAFAには、弱点があると思う」

「精神の奪い合い」が次世代ビジネスの主戦場

可処分精神を奪う、とは何か。一言でいうと、「つい、そのことばかり考えてしまう」状態にするということです。より具体的にイメージするためにわかりやすい例を挙げるとすると、恋愛や宗教があります。たとえば恋愛なら、好きな人ができると、その人のことばかり考えて仕事に本腰が入らなくなったり、学校にいても授業が頭に入らなくなってしまったりします。好きな人に可処分精神を奪われているのです。宗教もよく似ています。教義が行動原理として身体に染み込んでいるので、いつ何時も、そこに立脚して意思決定をすることになります。多大に精神が割かれている状態ですね。

前田裕二(まえだ ゆうじ)/ SHOWROOM代表取締役社長。1987年東京都生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業し、外資系投資銀行に入社。2013年5月にDeNA入社。同年11月に「SHOWROOM」を立ち上げ。2015年8月にスピンオフでSHOWROOM株式会社設立。同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け合弁会社化。著書に『人生の勝算』(撮影:風間仁一郎)

しかし、GAFAはこれがあまり得意ではありません。たとえばフェイスブックは、可処分時間を奪っていると言えます。でも、暇つぶしの際になんとなく時間を奪われているという状態で、可処分精神までは奪われていません。フェイスブックを開く親指がワクワクして震えるなんていう人は、そうそういない。アマゾンやグーグルもそう。「帰ったらグーグルで検索しよう♪」なんて心が浮わついて、日中仕事が手につかないような人は、この世界にあまりいなそうですよね。

GAFAの中でもアップルは、「ファンがいる」という観点で少し特別です。「アップルはIT企業ではなくブランドである」という哲学が、今日のアップルに高い収益性をもたらしているわけですが、この「ブランド自体にファンがついている」という状況、つまり他社と比べれば「アップルが好きで好きでたまらない」オーディエンスを獲得しているこの状況を観察すると、一定の宗教的要素を感じます。

しかし、ブランドは、継続性の観点で難があります。ライフスタイルや環境の変化を経ても人がずっと好きでい続けられるブランドは相当希少ですので、継続的にアップルのことが好きで好きでしょうがない、いつもどうしてもアップルのことを想ってしまう、というのが長期間にわたって継続するとは考えにくい。つまり、一見可処分精神を奪っているようで、実際にやっているのは「高級品を売る」ということです。これは実は、プレミアムが乗ったものを買ってもらって、可処分所得を奪っているだけ。

また、厳密に言うと、グーグルのYouTubeやフェイスブックのInstagramなどは可処分精神の奪い合いにおいて脅威になる可能性がありますが、まだ顧客一人ひとりの深さを獲得することに長けた場だとは言えず、「暇つぶし」の域を出ない。すなわち、GAFAはまだどこも十分に可処分精神を奪えていません。ここに、われわれの勝機があると思っています。

人は「寂しさ」から可処分精神を奪われる

――なぜ可処分精神を奪い合う方向へ向かうと考えておられるのですか。

本質的には、人が今よりもっと「寂しくなる」からです。効率化によって、今後、所得を割いても時間を割いても、紛らわせない寂しさがどんどん生まれていくと思っています。

たとえばこれから、AI化によってコンビニのレジからも銀行からも人が消えていくでしょう。人と関わらなくても問題なく生きていける社会になり、人との接点がしだいに減っていく。

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