前田裕二氏「GAFAには、弱点があると思う」 「精神の奪い合い」が次世代ビジネスの主戦場

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とはいえこれらは、少しレベルの高い話です。そこまでやらなくとも、リーダーがファンに面と向かって「私はこういう意見なんだけど、あなたはどう思う?」と話せるような、自助努力で双方向性の高さを担保できる規模ならば誰にでも作れますし、そこで(小規模だとしても)誰かの可処分精神を獲得することができます。

どんどん現実が寂しくなる時代、人は双方向のコミュニケーションに癒やされるわけですから、こうしたインタラクションがデザインされている分散型のコミュニティーが今後無数に出来上がるでしょう。もし、それらを束ねる胴元的存在が現れ、その企業価値が可視化されれば、驚くほどの規模になると思います。

「誰も覇権を握らない」という可能性

――GAFAに代わって、今後はそういった胴元企業が覇権を獲るということでしょうか。

可能性はあります。しかし、「集中から分散へ」という仮説を立てている時点で、「誰かが覇権を獲る」という予想は正しく未来を捉えていないかもしれません。仮想通貨市場が今以上に発達すれば、特に資本市場から調達しなくても、その自律分散型コミュニティー内だけで経済圏が完結し、回っていきます。そうすると、「うちのサービスは何十億人が使っていますよ」なんて、わざわざ言う必要もなくなる。コミュニティーを取りまとめて、その大きさや偉大さを誇示し、それによって時価総額を最大化し、その時価総額をテコにして、市場から成長資金を調達する。こういった必要がなくなるわけです。

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そうなると、もうGAFAのように、誰か限られた存在のみが中央集権的に力を持つような世界ではなくなります。代わりに、超熱狂的な小規模の自律分散型コミュニティーが無数に存在するようになる。この状態では、もう誰も覇権を握ってはいません。

これから多くのプレーヤーがこの未来を前提にして動くと思っています。そして、可処分精神を奪うためのネット上のサービスやプロダクトをたくさん出してくる。この趨勢によって、今この瞬間に中央集権型のビジネスにこだわっている会社の顧客や人材は、どんどん分散型のニュープレーヤーに奪われていくことになるでしょう。

(後編は後日公開。構成:泉美木蘭)

前田 裕二 SHOWROOM代表

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まえだ ゆうじ / Yuji Maeda

1987年東京都生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。2011年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。株式市場において数千億〜兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。その後、0→1の価値創出を志向して起業を検討。事業立ち上げについて、就職活動時に縁があったDeNAのファウンダー南場智子氏に相談したことをきっかけに、2013年5月、DeNAに入社。同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。2015年8月に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。現在は、SHOWROOM代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。

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