渡米16年、34歳の彼女がNYで踊り続ける理由 日本を離れてみたからこそ好きになった

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一方で、国籍問わず、タカエさんの友人や演劇学校のクラスメートには、映画に出演したり、アメリカの別の州でミュージカル俳優になった人もいる。こうした人たちは、一見、サクセスストーリーの主役のように見える。

タカエさんの見解はこうだ。「人から見たら成功しているように見えても、本人がサクセスだと思っているかどうかは別。みんなが、どんどん上を目指していくので、小さなチャンスをいくつつかんでも、決して満足できないのが、アーティストのさがかもしれません。

ニューヨークでは、現状に満足して立ち止まったら、負けた気になってしまうのです。周りのエネルギーに押されるように、頑張ることができる一方で、頑張りすぎて疲弊してしまうこともありますね。好きなことをしているはずなのに、なぜか苦しさを感じます」

日本人であることを強みに世界中の人を楽しませたい

タカエさんがニューヨークで得たことの1つは、意外なことに「日本が好きになり、日本人であることを誇れるようになったこと」らしい。

10代のころのタカエさんは、「日本は歴史上、酷いことをした国だ」という意識が強く、「日本人であることが恥ずかしい」と思っていたそうだ。それが今では、「日本はあんなに小さい国なのに、世界での存在感を確立しているし、何ごとにもまじめに取り組むことができる。人に合わせることも得意であると同時に、才能をうまく使って突出することもできる、すばらしい人種だと思う」という。

2017年の『Tate Hatoryu』4周年記念公演で(撮影:Masaki Hori)

タカエさんは2018年初めにCOBUを脱退。今は殺陣にチャレンジしている。太鼓や殺陣に惹かれるのも、日本文化を伝えたいからだ。「体型や技術力では、ほかのダンサーに負けてしまうけれど、表現力が私の強み。表現力と、日本人であることを活かして、人がやらないことで勝負したい」と意欲を見せている。今後の夢は、殺陣でヨーロッパ公演を実現させること。将来的には、世界各地を周り、ダンスをコミュニケーション手段として、人々を楽しませたいと考えている。

「日本にはもう戻らない?」という質問には、「いえいえ、そんなことはありません。ビザの更新の度に、帰国したいという気持ちと、残りたいという気持ちで揺れています。確かに、ニューヨークはユニークな人と出会える魅力的な街なので、なかなか離れがたい面もありますけれど、『やりたいこと、できることがない』と感じたら、帰ると思います。最近は特に、両親が私の帰国を望んでいるのが伝わってくるので、心はグラグラです。そろそろ結婚して子どももほしいですし」

そして、「これだけは伝えたい」とタカエさんは続ける。

「私は色んなきっかけが重なり、ニューヨークでチャレンジしていますが、『日本に帰国したら夢が叶わない』と思ったことはありません。強い気持ちで夢に向かっていけば、どこにいても、なんらかの形で必ず夢は叶うと信じています」

次にタカエさんのビザが切れるのは、1年後。その間に、ニューヨークでどんな夢をつかむのか。どんな転機が訪れるのか。

鯰 美紀 インタビュアー&ライター

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なまず みき / Miki Namazu

兵庫県芦屋市出身、関西学院大学卒。関西経済連合会・国際部に5年間勤務し、結婚を機に退職。ワシントンD.C、北京、東京を経て2018年夏からニューヨーク在住。ライターとして、会社役員からメダリストまで、約3年間で250人以上を取材。企業パンフや専門誌などに幅広く執筆するほか、プロフィール作成等で個人事業主を応援している。公開インタビュアーとしても活動中。http://namazumiki.com

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